怪我の功名
【けがのこうみょう】
[意]過失と思われたこと、何気なくしたことが意外にも良い結果になること。




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馨「あれ?いつもの懐中時計は?」






放課後、浮き足立ってホスト部に向かおうとするあたしに、馨がそんな一言を投げかけた。





『え、懐中時計ならココに…』





と、胸元を触っても定位置に時計がない。

あれ?なんで?
カバンにも、ポケットにも入っていない。





『あ!さっきの乗馬の授業で着替えたときに外したんだ!たぶんロッカーに置きっぱなしだな』


光「おっちょこちょいなヤツ〜。大事なモンなんでショ?」


『そ、お母さんにもらった大事なものだから乗馬中は外してたの』





取りに行くからと、双子とハルヒには先に行ってもらった。





『え?なんで…』





ロッカーにも懐中時計はなかった。
どこを探しても、見つからない。

お昼休みまではあったよね〜、だって時計見て5分前だからって慌てて教室戻ったし。


あの懐中時計、お母さんからもらっただけじゃなくて、鏡夜先輩との大事な思い出があるのにっ…



校舎の中を這いつくばって探していると、窓からハルヒが校庭の池に入って教科書やらを拾っているのが見えた。

不思議に思って校庭に出る。





『ハルヒどうしたの?』


ハルヒ「あー、あか。いや、ちょっと落としちゃって」





何をしたら池に教科書が落ちるんだろう?とういかどう考えても絵に描いたようなイジメじゃないだろうか…なんて思いながら池の周りをハルヒの財布と一緒に自分の時計も探していると、お前たちは探し方がぬるい!と、環先輩をはじめホスト部の皆様が手伝いに来た。





「ところで、お前は何を探しているんだ?」





目の前にはジョンロブのローファー。

この靴にこの声は…
ふと顔を上げると、もちろん愛しの鏡夜先輩。





『あー、ハルヒの財布…ですかね?』


鏡「そんなところにか?」





ハルヒたちと少し離れた植え込みの近くにある、大きな石をひっくり返していたあたしに、いつもの(?)呆れた感じで見下ろしている鏡夜先輩。





『あー…えへ


鏡「可愛くない(キッパリ





うーん、いつも通り(涙)

そりゃ石の下に財布なんか落ちてないよね(汗)もちろん時計だって。
でもなぜか鏡夜先輩に懐中時計を失くしたことを言えなくて 変な感じでごまかしていると、


ササッ!


視界の隅で何かが動いた…





『キャーッ!』


鏡「……」





よく見ると、動かした石の裏にいたダンゴムシくん達がちょろちょろと動いただけだった。





『なんだ〜、ダンゴムシか』


鏡「どうでもいいが、いつまでそうしているつもりだ?」


『え?』





頭上から聞こえる先輩の声で我に返ると、真上に鏡夜先輩の顔が。目の前には…ネクタイ?

なんと、驚きのあまり立っている鏡夜先輩の腰に手を回して抱きついてしまっていた。





『わあ//ごめんなさい!!』





急いで身体を離して立ち上がった。

キャー////
勢いとはいえ、抱きついちゃった//
と顔を赤らめてあたふたしていると、不思議そうな顔であたしを見る鏡夜先輩。





『な、なんですか(汗)』


鏡「いや、何も…」
(いつもは構わず抱きつこうとするヤツが、いざ抱きつくと照れるのか。変なヤツだな)


『そ、そういえばハルヒの財布は?見つかりましたか?』





顔の火照りを隠すのに話題を変えた。





鏡「いや、まだだ。もう暗くなるから解散したが…」


『先輩たちはまだ探すんですね』


鏡「…そういうことだな。」


『じゃあ、頼みますよ、ハルヒの財布。』


鏡「もちろんだ、」





鏡夜先輩より環先輩の方が必死だろうなーと思いながらスカートについた土を払い、帰ろうとすると





鏡「安心しろ、」





と、声をかけられた。





『別に心配してませんよ(汗)環先輩とか何が何でも見つけそうですし』





そういうと、鏡夜先輩はフッといつもの不敵な笑みを浮かべた。

でもなぜか、"安心しろ"ってハルヒの財布のことじゃないような気がしたけど…そんなわけないか。

懐中時計は明日もう一回教室の机とか探すかな…





『それでは、また明日(ニコ』





スカートを広げ笑顔で挨拶をする。





鏡「あぁ」





先輩と別れカバンを取りに校舎へ向かう最中、さっきのことを思い出した。

っていうか鏡夜先輩…
いい匂いだったな〜
あー、もっと抱きついてればよかった?もったいないことしたかも…
でも、今日は探し物のおかげでたくさん先輩とお話できたぞー♪ヤッホーイ♪


とニヤニヤしていると、





「声に出てるぞ、」





と、後ろから聞き覚えのある毒舌が。





『Σなっ!鏡夜先輩ッ!』





振り向くと、なぜかさっき別れたはずの鏡夜先輩が。





『い、いつから(汗)』


鏡「ずっと後ろにいたが?どうでもいいが、独り言は小声で言うかちゃんと心の中に留めておけ


『なっ//そ、それにしてもどうして…』


鏡「環たちがそっちにいる」


『あ、そうですか(汗)』





なんか変に期待しちゃったじゃないですか(涙)

1人じゃ危ないからついてきた、とかさ。
ま、鏡夜先輩があたしのためにそんなことはしないだろうけど。

メリットないもんね、シュン。


…というか、あの独り言全部聞かれてたのか(汗)





鏡「帰り道…人を襲うなよ?」





なんて言いながら、あたしの肩にポンと手を置いて追い越していった。





『…はは、あはは(笑)』





嬉しすぎて笑っちゃったじゃん(笑)
どんな理由であれ、どんな一言であれ、あたしのためにかけてくれた言葉は、

あたしだけのもの。





怪我の功名

(せんぱーい、送ってくれても…)
(断る。)
(やっぱり?)






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