どんなに憂鬱で、どんなに嫌でも時というものは進んでしまう。



月曜日、制服に着替えてふと携帯の電源を切ったままだと思い出す。
いつもは携帯が無いと不安な癖に、自分から触れないようにしていれば無くても大丈夫なんだな、と思ってしまう。

佐助先輩から連絡が来ているだろうか。
一方的に別れのメールを送り付けてしまったのだ。きっと怒っているかもしれない。


恐る恐る電源を入れてみる。



光を放つ画面に写し出されたのは"着信一件"の文字。


ぐ、と零れそうになる涙を唇を噛み堪える。

馬鹿だな。何を期待しているんだろう。
もしかしたら何度も電話を掛けてくれているかも、とか、何度もメールをくれているかも、とか、そんな訳無いのに。
だって、私は佐助先輩にとってかすが先輩の変わりで、もし私と別れたなら他に変わりの人を探すか、かすが先輩にアタックすれば良いだけのこと。



「ははっ」



どこまで行っても浅はかな自分に自嘲の笑みが漏れた。











「行ってきまーす」




がちゃりと家のドアを開け、歩き出す。


登校時間は佐助先輩とばったり出会ってしまわないように遅刻ギリギリだ。
きっと佐助先輩は幸村先輩の朝練に付き合って早く登校するだろうから、普通の時間に家を出ても会うことは無いかもしれないけど、念のため。



てくてくと歩きながら学校でも佐助先輩とばったり会ってしまわないように頭の中で一日の計画を立てる。


ただ、会ってしまった時にはきちんと正面から別れて下さい、と言おう。メールだけで一方的になんてやっぱり失礼だよね。

そう心に決めながら学校への道を歩いた。







がしっ





もうすぐ学校、という所で後ろから掴まれた右手に思わず「ひっ」と情けない声を上げて驚く。

考え事をしていたからか、後ろの人が気配を消すのが旨いのか。
答えは勿論後者だ。

だって、この手は。





「さ、すけ、先輩……」




ゆっくり振り返り震える声で彼の名前を呼ぶ。




そこには眉間に皺を寄せ、静かに怒りのオーラを放つ、愛しくてけれど会いたくなかった彼が、居た。









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