土曜日。


部屋の窓から淡い橙色をじっと見つめる。

日が西へと傾き、蒼く澄んだ空はその色を変え、温かいその光を地へと降り注ぐ。





彼の、先輩の髪色と同じ色。






あれから、自分がかすが先輩の代わりだとそう気付いたあの日から、佐助先輩とは会っていない。
サッカーの試合、というか幸村先輩のサポートに集中して欲しいから、と理由を付けて逃げていたのだ。

けれどその試合は今日。


きっと月曜日になれば、またいつも通り佐助先輩は一緒にお弁当を食べて、放課後は迎えに来て一緒に帰るのだろう。
私の気持ちなど知らず。

私は、自分がこんな気持ちを抱きながら今迄通り佐助先輩と笑い合う自信が無い。
勝手なのは分かってる。

佐助先輩が私に対して"かすが先輩の代わりだ"とそう告げた訳じゃない。完全に自分の被害妄想かもしれない。

けれど、私は、佐助先輩に私を一番に見て欲しかった。
他の人に少しも同じ感情をもつことなく、私だけを見て欲しかった。


だから。


今の宙ぶらりんな状態は嫌なんだ。







右手に持つ携帯をカチ、カチ、と打っていく。



ごめんなさい、佐助先輩。
先輩が望むように、私はかすが先輩の代わりにはなれないんです。



たった一月とちょっとだったけれど、本当に、大好きでした。


直に話す勇気も無い弱虫でごめんなさい。





"別れて下さい。かすが先輩と、きっと幸せになって下さい"




たったそれだけのメールを、震える指で、送信した。











あぁ、これで私と佐助先輩の関係は終わったんだ。









ぼふり、とベッドに倒れ込み携帯の電源を切る。


じわりじわりと胸が苦しくなって、後悔して、だけど正しかったのだと言い聞かせて、枕に顔を埋め、声を殺して感情のままに、泣いた。








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