「名前ちゃんってさぁ、かすが先輩にちょっと似てるよね」

「え………?」




友達の言葉に、血の気が引いた。




昼休み、いつもは佐助先輩と、幸村先輩とお弁当を食べるのだけれど、今日は先輩達がサッカー部の試合が近く、ミーティングがあるらしく私はクラスの友達とお弁当を食べていた。


やっぱり皆、佐助先輩とのことが気になるみたいで私は質問責めにあっていたりしたけれど、その一人がぽつりと呟いた言葉。
それが先の言葉だった。


「あー!何となく似てるね!」

「目元とか確かに似てるー!」

「かすが先輩を小さくして雰囲気をふわふわさせたら名前ちゃんになりそうだよね!」


きゃいきゃいと騒ぐ友達を尻目に私は頭が真っ白になっていた。

そんな時、とどめを刺すかのように友達が放った一言は、私をどん底に突き落とした。


「佐助先輩ってずっとかすが先輩のことが好きだったって聞いたことがあるよ!」

「え…」



知らなかった。


かすが先輩って、この前上杉先生と一緒に居たあの綺麗な女の人のことだ。
…佐助先輩が、私に向けるのと同じ表情で見ていた、あの人。


否、違う。


かすが先輩に向ける表情で、私を見ていた――…?



至った最悪な考えに胸が締め付けられる。お腹の中はぐるぐると掻き混ぜられるかのように気持ちが悪い。



友人達は、「佐助先輩の好みの顔ってかなりレベル高いよねー!」なんて盛り上がっている。



「名前ちゃん?」

「!」


友達の言葉にハッと意識を戻す。


「大丈夫?顔色悪いんじゃない?」

「あ、はは、大丈夫。ちょっと考え事」


無理に笑って誤魔化せば、彼女達は心配そうにしながらも追及はしてこなかった。





そうか、



そうだったのか。




考えてみれば最初から出来過ぎていたじゃないか。


一目惚れ?そもそも佐助先輩は一目惚れするような人じゃない。
そんなことはこの一ヵ月で知った。

きっと、"一目惚れ"だと言って色々な感情が籠ったように笑ったのは、かすが先輩の代わりが見つかって嬉しかったのと、私への罪悪感が交ざっていたからなんだろう。




私はかすが先輩の代わりだった



そう自覚した途端、世界がモノクロになった、気がした。









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