彼女は、代わりだった。




俺様がずっと想いを寄せている、かすがの。




幼馴染みで小さい頃から一緒にいたかすがを俺様はずっと好きだった。けれど自分の気持ちを言い出せないまま歳を重ねて。中学に入った頃、かすがに"憧れの人"が出来て。それが上杉先生だった。上杉先生が居るからとかすがはこの高校に入学して、俺様も家から近いしかすがと同じ高校だし、と思って迷わずこの高校に入った。


けど、俺様も思春期な男の子な訳だし、報われない恋をしててもやっぱり心の隙間を埋めてくれる存在は欲しいし、まぁ男の子なら正常に溜まってくる欲だってあわよくば女の子で発散したい訳で。
最低だけどはっきり言って、"かすがの代わり"で女の子達と付き合っていた。


でも、やっぱりかすがが良くて。



そんな時、二年になって新入生が入って来て、あの子を、名前ちゃんを見つけた。


たまたま、俺様達いつものメンバーを取り囲むように群がる女の子達の向こうで、俺様達を眺めるように見ていた彼女。
距離は離れていたけど、顔立ち、というか目鼻立ちが若干かすがに似ていて、俺様は一時彼女から目が離せなかった。
彼女なら今まで付き合った女の子達の誰よりも、かすがの代わりになってくれるかもしれない。

そんな最低過ぎる考えで、彼女に近付いて、言葉巧みに告白をOKさせて付き合い始めて。



最初は、本当に代わりだった。
名前ちゃんが笑えば、かすがと笑い合っているようで幸せな気持ちになれて。
名前ちゃんが拗ねれば、かすがが拗ねているようで愛しく思えて。


けれど、彼女はかすがと違って、小さくて、ふわふわしてて。性格だって全然違う。
顔だって、目鼻立ちはどこか似てるけれど見慣れれば全然違う。


それを自覚してるのに、やっぱり名前ちゃんが愛しかった。
つまり、俺様はいつの間にか名前ちゃんのことを、"かすがの代わり"としてではなくて、"名前ちゃんだから"好きになっていた。



名前ちゃんを好きになっても、昔から好きだったかすがをいきなり好きじゃなくなる訳じゃないし、未だに好き、なのかもしれない。ただ、好きの比率が名前ちゃんの方が大きくて、一番だというだけで。



だから俺様は気付かなかった。


かすがを見る自分の表情に、未だ"愛しい"という想いが交ざっていることに。


そして、


その表情を見た名前ちゃんが不安を抱え始めたことに。








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