"一目惚れだったんだ"、そう言った先輩は、幸せそうな、申し訳なさそうな、色々な感情が交ざったような顔で笑った。





あの日の告白から一ヵ月が経った。つまり佐助先輩と付き合い始めて一ヵ月。
付き合い出してからすぐ夏休みに入ったこともあって、色々な所に二人で出掛けたり、所謂デートを重ねて、少しずつ佐助先輩のことを知っていけてると思う。


幸村先輩のお母さんみたいだったり、かなり庶民的だったり、飄々としてるけどちょっと他人と一線引いてたり、けれど私にはすごく甘かったり。


佐助先輩が言ってた通り、付き合ってみて中身を知って、そして好きになる、そういう恋愛もあるんだなって思ったりするようになった。




「名前ちゃん、帰ろっか」

「あ、今行きます」



二学期に入って、私と佐助先輩が付き合っている、ということはすぐに周りに広まった。
というか一緒に帰れる日に教室まで迎えに来るから一年で知らない人は居ないと思う。
そもそも佐助先輩は元々有名人だし目立つし学校中の人に知れ渡っているかもしれないけれど。


だってこうして二人で帰る時に様々な角度から視線を感じる。


「うう…」

「なーに唸ってんの?」

「だって、まだ慣れないんです、沢山の人に見られるのに」

「アハー俺様はもう気になんないや。大体真田の旦那達とかいつものメンバーと一緒に居ればもっと視線感じるしね」

「あー…確かに凄そうですね…うん、それは何か納得です」


私だったら耐えられない、と眉間に皺を寄せればアハハと笑われる。


どくり、とその綺麗な笑顔に心臓が高鳴って。
あぁ、ほんとに好きになってしまった。佐助先輩のことを何も知らずに告白されるがまま、言わば成り行きのように付き合ったというのに、たった一月で、もう抜け出せない程に。






「あれ、かすがだ」



私が佐助先輩の笑顔にときめいてる間に、ちらりと視線を外した佐助先輩が呟く。
私もその視線を追えば、佐助先輩の視線の先には上杉先生と金髪のすごく美人でスタイルの良い女の人(多分先輩だと思う)が仲良さげに話をしていた。

きっと佐助先輩が呟いた"かすが"というのはあの女の人の名前なんだろう。
お友達なんだろうかと関係を聞きたくてその二人から視線を外し、佐助先輩を見た私は言葉を失った。






他人と一線を引く佐助先輩が、私を見ている時と同じ表情で、"かすがさん"を見ていたのだ。





(佐助、先輩…?)




むくり、不安が顔を擡げる。









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