「俺と、付き合って下さい」



高校に入学して三ヵ月、漸く学校にも慣れてきた頃、私は一人の先輩に告白された。

橙色の髪の毛に、迷彩色のヘアバンドをして、耳にピアスをした派手な二年の先輩。

その名も猿飛佐助。

彼は学校では知らない人は居ないと言われる程の有名人だ。
学校で騒がれているイケメン集団の中の一人で、ファンクラブまで有るなんていう噂も聞いたことがある。

私だって遠目から見てあー確かに格好いいわー目の保養だわーなんて思って見てたこともあるから納得だけれど。



ただ私は周りの子達みたいにお近付きになりたかった訳じゃない。遠目から見て目の保養をするだけで充分だったのだ。
それが、何がどうなってこうなったのか。これが神様のいたずらというやつなのだろうか。

何の接点も無かった筈の私と猿飛先輩。
猿飛先輩は有名人だし、私が先輩のことを知ってるのは当たり前だと思う。
けれど、猿飛先輩は入学してからまだ三ヵ月しか経っていない一年の私の事をどうして知っているんだろう。
そしてどうして私に告白なんてしているんだろう。


「えっと、その、お気持ちは嬉しいんですけど、私、先輩のこと良く知らないですし…」


取り敢えずあまりの驚きと恥ずかしさにぐるぐる回る頭で必死に紡ぎ出した言葉は何ともベタな常套句だった。


「俺様だって名前ちゃんのこと、そんなに知らないけど、そんなの付き合ってるうちに知っていけばいいと思わない?ね、名前ちゃんに今好きな人とか付き合ってる人がいなければお試しみたいな気持ちでもいいし。俺様と、付き合ってくれないかな?」


私は今夢でも見ているんだろうか。こんなイケメンに、お試しでいいから付き合ってくれと。そう言われて。
私だって華の女子高生になった訳だし、恋愛だってしたい訳だし、それをこんなイケメンの先輩に告白されるという夢のようなシチュエーションで、首を縦に振らない方がおかしいと、私は思うのですが。


未だぐるぐる回る頭で出した答えは "Yes"


こくり、と首を縦に振って、「宜しく、お願いします…」と言えば先輩は綺麗に笑って「良かった」と呟いた。






私はまだ知らなかったんだ。

光の裏に、影があるように、白の裏に、黒があるように。


この甘い夢のような現実に、黒く悲しい現実があることを。










← →



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -