02
暗い地下牢。
そこには簡素なベッドが一つあるだけだった。
そのベッドに横たわるのは一人の少女。
さらけ出された長い手足は傷だらけで手首足首に錠が付けられている。
それだけでどれほど劣悪な環境で生活しているのかが分かるようだ。

「おい」

格子の外から掛けられる声に顔が上がり長い髪で隠れていた表情が見える。
通った鼻筋に小さめの口。
長い睫毛に守られた瞳は澄んだグリーンだが生気がないように見受けられる。
10人が10人振り返り美人だと言うであろう顔立ち。
綺麗にしたらもっと美しいのかもしれない。

「出ろ。バート様がお呼びだ」




**



「おー結構人居るなぁ〜」

「飯ー!!」

「ちょっとルフィ!」

ナミの制止も聞かず勢い良く船から飛び降りたルフィは走って街の方へ向かってしまった。

「ったくあいつは…」

「あ、雪が」

額を押さえるナミの横で沿道に積もった雪を見てビビが言う。

「え?あぁ、ドラム島とそんなに離れてるわけじゃないしね。この島もたまに雪が降るんじゃない?」

「長袖じゃないと寒いものね」

「そうね、暖かくしといた方がいいわ。ゾロ!あんたいつまで寝てんの!?島に着いたわよ!」

「ぁあ?」

「皆街行っちゃったけどあんたどうする?」

サンジは食料調達、チョッパーは医療品調達。
ウソップも掘り出し物がないか見に行ったしルフィは言わずもがな、ご飯だ。
ナミとビビもショッピングに行くつもりだった。

「あー…少ししたら行く」

「そう。迷子にはならないでよね。行きましょビビ」

「ええ」

まだ眠いのか目を瞑ったまま答えるゾロに忠告しナミとビビも船を降りた。

「どんな島なのかしら」

「んーさっき看板にはファーマシス島って書いてあったけど…あ、ねぇおばさん!」

街に入れば左右にお店が並んでいた。
その中から果物を売る感じの良さそうなおばさんに声をかける。

「なんだい?」

「ここってどんな島なの?」

「おやお嬢さん達旅の人?」

「んー ま、そんな感じ」

「この島は別名薬剤師の島って呼ばれてる」

「薬剤師?」

「そうだよ。優秀な薬剤師が沢山いてね、世界で活躍する名のある薬剤師は9割がこの島出身さ」

「へぇ、すごいのね」

「今は昔のように自由な島ではなくなってしまったけどねぇ…」

先程まで人の良さそうな笑顔だったのが視線を落とし暗い表情に変わったおばさん。

「え?どういうこと?」

「…3年程前からこの島は貴族に支配されるようになったんだよ。あの忌々しい天竜人のせいでね…あの子まで、っ」

後半は聞こえるか聞こえないかの小さな声だったがナミとビビにはしっかり聞こえていた。

天竜人

聞いたことがあるようなないような。
おばさんに聞こうと思ったがあまりにも辛そうに顔を歪めるものだから聞くに聞けない。
そのまま礼を言い店を後にした。

「天竜人…」

「なんか大変な島に来ちゃったかも…さっさと買って出ましょ」

「ええ…」

それにしてもあの子とは。

「(あの子って誰なの…?)」


mae tugi

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