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腹減ったな。
そんな事をぼんやりと思って目を開ければ目の前にはコーラが置いてあった。
一階にある自販機の紙コップのやつだ。
「あ、の、それ…雑賀さんがさっき…っ、ぉ置いて」
怖ず怖ずと話し掛けてきた隣の席のやつを見れば、なぜか泣かれかけた。
よく見りゃ雑賀の席にもコーラが置いてある、時間ももうすぐ昼休みみたいだし奴が買って来たんだろ。
「んで?雑賀は?」
「―――っ」
あ、泣いた。
ぼろって涙がこぼれ落ちてそいつは肩を震わせる。
いやいやいやおかしいだろ!
「美月」
「…灰田か」
「屋上、行かないか?」
「……?」
「美月が珍しく教室にいるから皆が緊張してる」
「てゆーか授業中だろ?今」
「…先生も、緊張してる」
なるほど。
つまり俺の存在は煩わしいが、自分では言えない奴らが一応俺の"彼氏"である灰田にお願いしたんだろ。
連れて出ろ、と。
「んじゃ、行くか」
「ああ」
コーラと昼飯掴んで俺達は教室を後にしたが、灰田は授業よかったんだろうか?
まぁ、関係ないが。
「お前、飯は?」
「弁当持ってきてる」
「ふぅん」
そんだけ話して屋上に入ればやはり会話などなく食って飲んではい終了。
俺はいいけど灰田は気まずくないんだろうか?
「…寝る」
「ん」
帰ってもいいんだぞ?
思ったけど口には出さなかったのは、灰田が空気みたいな奴だからかもしれない。
「美月、ここ」
「……は?」
「いつあの二年がくるかわかんないから」
「あー」
「嫌か?」
「んー…、まぁいいか」
指差された"ここ"に頭を乗っけると、灰田はふんわりと笑った。
野郎の太ももなんか柔くもねぇなぁ、なんて、苦笑しつつも俺は目を閉じた。