「それでも―‥」

月足はこぼれ落ちる言葉を止めれずに俺にすがる。
誰のせいでそんな気分にされてると思ってんだか。

「―――俺は」

ああ、嫌だ。
へどがでる。

「先輩が、欲しい」

良くない目だ。
性別を越えて、俺の征服欲を煽る嫌な目をしやがる。

「絶対、やだね」

頭では理解できなくても本能はハッキリと理解した。
なんでコイツをこんなに拒絶したがるのか。
"同性"だからじゃねぇ。
コイツは知ってるんだ、どんな女も満足させれなかった、暴君で横暴な俺の残酷な満足のさせ方を。

「灰田、だっけか」
「え?あ、あぁ」
「行くぞ」
「いいのか?ソイツ」
「いいんじゃねぇの?俺は用ないし、知らねぇよ」

だからどうだってんだ。
ここで終わる関係だ、この先女が出来なくったって男には走らねぇよ。

「先輩、愛してます」
「‥―っどやかましい」

一発腹を蹴り上げて崩れ落ちた背中を踏み付ければ、月足は微かに笑ってみせた。
ドMじゃねぇか気色わりぃ。

「今は、不愉快かもしれない、嫌悪するかもしれない」
「………ハァ?」
「でも、絶対、先輩は俺じゃないとダメになる」
「頭打ったか?」
「だって俺、こんなに人を愛することはもうない」

ナニコイツ。
これときめくとこ?
違うだろ、ドン引くとこか笑うとこだろ。

「死んどくか?」
「…っぐ、ぅ、美月刄!アンタの人生でこんなに愛されることは二度とない!」
「そりゃどーも」
「だから俺に愛されて下さい!代わりに俺を全部あげます!!」


それってかなり
お前が損なんじゃねぇ?

出かかった言葉をどうにかのむと左足を振り上げて、奴の身体を軽く吹き飛ばした。
細いわけでも太いわけでもない普通の身体、言うならちょっと筋肉質な長身。
そんな身体に異常な中身を詰め込んだ変な男。

月足糀。

それと横に佇む男、
灰田。

奇妙なフラグがすでに立っている事などこの時の俺には知るよしもない。





後に思う。
あの時昼寝などしていなければ、と。




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