「美月ってばなんで彼女つくらないのー?」
春らしい柔らかな風に吹かれて雑賀は俺に問い掛けた。
「ムリ、俺女の我が儘とか甲高い声とか本気ムリ」
「セフレはー?」
「何人かいた」
「へぇ、過去形?」
「あの煩わしい声聞きたくなかったし、ベタベタされるのムカつくから突っ込んでる間中縛りつけて口抑えてやったら皆逃げてった」
「ドエスじゃん!」
「うるせぇよ」
無理矢理やったわけでもねぇし『愛が無くてもいい』っつったのアッチだし。
乱暴にした自覚はあるが殴ったわけでもない、突っ込む時だって濡らしてやってる。
こんな男に媚び売る女が馬鹿なんだよ。
「ま、いいけど」
そう言って雑賀は携帯をカチカチと弄っていた。
興味あんだかないんだか。
あぁ、でも。
本当に春はいい。
柔らかい日差しに時折吹く冷たい風、なんだか全部どうでもよくなる。
本当に、ねむい。
「美月寝るのー?」
「……ん」
「…………」
雑賀が何かを言った気がしたけれど、すでに俺の意識はひんやりとした屋上の床に融けていた。
やっぱ春の昼寝はサイコー‥
「あ、もしもし?やっぱりこのままじゃ上手くいかないんじゃない?強行手段に出たほうが―――‥」
『――――――』
「ふむ」
『――――――』
「あー、逆にね」
後に、思う。
春の昼寝は最低だった、と。