戦う男がカッコ良く見えたり、強い男に憧れたり。
男として生まれたなら少なからずそういう経験があるだろう。
「萌黄君、終わったよ」
「早かったな」
今日もまたひとつチームが壊滅。
いくつ潰しても潰しても増えるばかりだ。
でも、この地に生まれたなら誰だってそうだ。
純粋に強さに憧れる。
強くなりたい、上を目指したい。
だけどそれがどういう事なのか、上を見上げる彼らには気付かない。
眩しいだけの空に憧れ、目がくらんで見えないんだ。
「うん、和雅達は向こうで警察撒くみたいだから俺たちはあっちから帰ろう」
「ああ」
上り詰めた先には何もない。
ただ、暴力と言う名の罪が自分の後に積み上げられているだけ。
手に入るのはそれだけ。
それだけなんだ。
「萌黄君、そんな顔しないで」
「………してない」
「してるよ」
それでも強さが欲しい、馬鹿な俺達。
何を犠牲にしても、どんな罪を背負おうとも。
「炎、俺は俺の人生に対してなに一つの後悔もない」
「……そう」
「自分がしてきた事が正しいと思ったことは一度もない、でも、だからって後悔したこともない」
その言葉に嘘はひとつもない。
だけど、
この悪行のツケがお前に回るんじゃないかと思うと怖くて堪らない。
他人の大事な人間だっていっぱい傷つけてきた。
だから、こんな事をいう資格なんかないんだって頭ではわかってるのに…
「でも、きっと俺等は地獄行きだな」
俺は最後まで悪人でいい。
炎は心優しい奴だけど、やっぱり地獄行きだから、
二人でどんな罰でも受けるから、
どんな苦痛でも、困難でも
地獄に落ちるのでさえ…
二人一緒で。