バレンタイン





「真ちゃん、お客さん来たよ」






バレンタイン
〜Part 緑間〜



秀徳高校バスケ部。
それは練習中の出来事だった。


「客…?俺にか?…誰なのだよ?」

「なまえちゃんだよ。なまえちゃん。…真ちゃんの愛しい彼女さん!」


高尾がおちゃらけて言う。取り敢えず高尾の言葉をスルーして、緑間は体育館の出口の方に向かった。

体育館を出て少し歩くと、待っていたなまえの姿が見えた。なまえは携帯をいじっていて緑間の存在に気付いていないようだった。



「…久しぶりだな。待ったか?」

近付いて緑間が声をかける。その声で気付いたようで、なまえが携帯から緑間へと目線を移して笑顔を見せた。


「ううん、全然待って無いよ」

「そうか。…なら良かったのだよ。…で、今日は一体どうしたのだ?」


久しぶりの再開に浸る間も無く、緑間は直ぐに本題へと話を勧める。


「うん。今日はこれを渡しに来ただけ。」

なまえが鞄の中から一つの小さな可愛い袋を取り出して緑間に渡して、一言。


「バレンタインチョコ。
…真くんには今日中に渡したくて。…来ちゃった」


静かに微笑むなまえに緑間は反射的になまえの髪に手を伸ばしかけた。でもその手は空中て止まり、なまえに触れる事は無かった。


中学から恋人だったが、中学を卒業して高校はそれぞれ別々だった。最初は会う時間があったものの、段々両者とも忙しくなってきて、ろくに会える日が少なくなった。

所謂 「遠距離恋愛」 だ。

最初は遠距離恋愛でも大丈夫だと思っていたがこれが案外難しい。
二人ともお互いに不安ばかり募って擦れ違いが続いた。

そのせいで久しぶりに出会っても、お互い気まずさを感じるだけだった。



「…これは…本命なのか?」


不意に緑間が口に出した。 なまえは少し俯いて言った。



「…本命、だよ。」




なまえが俯いてるせいで表情が良く見えなかったが、緑間には淡く微笑んでいるように見えた。






バレンタイン
〜Part 緑間〜
(黄瀬や黒子たちにも渡しに行くのか?)
(…うん。…明日、ね)