バレンタイン




「よーし。皆ー、一旦集合ーっ!」







バレンタイン
〜Part 海常〜




練習試合中、笠松が突然召集をかけた。

突然のことに皆一斉に、不思議な顔をして笠松のことを見る。なまえも一応、皆と一緒に集まってみた。

皆集まったのを確認したところで笠松は話を切り出した。


「…あー、たいしたことじゃねえ。…皆知ってることだと思うが、明日はバレンタインだ。」


意外にも部活の話じゃないみたいだ。
これはまた予想外な言葉に皆は本日二度目の不思議そうな顔をした。

「あの、先輩?…バレンタインだから何なんスか?」

黄瀬が手をあげ、皆の代表と言わんばかりに発言した。

そんな黄瀬を笠松はジロリと睨みつける。

何も悪いことした覚えが無いため、黄瀬の顔は多少の焦りに支配されていた。

「…何スか…?」

「今年のバレンタイン、部活内では禁止だ。」

笠松が言い出したのはバレンタイン禁止命令だった。

「何でっスか!?」

話の趣旨が解らない黄瀬は質問する。


「…おまえが…おまえがモテすぎるせいで練習にならねえからだろーがっ!」


笠松が思い切り言い放った。

他の部員となまえは確かに、と 心の中だけで思った。


「ええーっ!?何でそうなるっスか!酷いっスよー!」

「…うん。確かにさあ…当日の整備、大変だもん。きっと」


マネージャーのなまえは普段の部活中で黄瀬目当ての女子たちの整備が大変なのは身を持って知っている。

それがバレンタイン当日ならもっと大変だろうということも予想はつく。


「ま、そういうことだから。…部活内でチョコ見せびらかす奴いたら、速攻、潰すから。」


笠松の笑顔が、無駄に怖いと感じた今日この頃。


「…じゃ、解ったら解散!とっとと練習戻れ!」


集まった部員たちはその言葉で一気に散った。



なまえも自分の仕事をやりに行こうとした瞬間、誰かに肩を叩かれた。

振り返ってみると、そこにいたのは…

「…黄瀬、くん?…何か用?」

「ん、…特に何も無いんスけど…」

「何?」

「…うーん」


なかなか口に出さない彼。そんな焦らされると逆に期待…っていうか、気になります。




「なまえっち…良かったらなんスけど…、バレンタインのチョコ、くださいっ!」

「は?」


今さっきの召集での話、彼は一体何を聞いていたのやら。


「じゃ、俺 気長に待ってるっスから!」


黄瀬は言ってからら、すぐに練習に戻ってしまった。


さて、バレンタイン当日、どうなることやら。





バレンタイン
〜Part 海常〜
(…取り敢えず、チョコ作ろ)