至福の時間をくれるのは。(進撃/ジャン)






「あれ?ジャン、今日はちゃんと演習やるんだ?」









至福の時間をくれるのは。












訓練兵になって結構時間が経った。
皆、成績上位を目指して日々訓練に励むのだが、その大半は成績上位になり憲兵団を志願し、内地に行くため。

点数を稼ぐ為皆頑張るのだが、この対人格闘技の演習だけは違った。


何故ならこの演習はそれ程点数にならないからだ。



その為、内地志望者は殆どの者が骨休みに使う程の項目。




それは私もだし、今、目の前でちゃんと演習をこなしている彼、ジャンも同じだったはずだ。



「あはは、珍しいよね。ジャンがこの演習をサボらないなんてさ」


ジャンの方をじっと見て動かなかったからか、マルコが私に話しかけてくれた。

今日も演習サボるんだろう?じゃあ相手は僕でもいいかな?
と話相手になってくれるらしいマルコは私がずっと気になっているジャンが急にやる気を出している経緯を話してくれた。




「へーえ。じゃあエレンに一泡吹かせたいが為に?」

「まあ、そんなとこかな」

ジャンに対して少しの呆れを含んだようにマルコが笑う。


辺りを見回し、何処かにいるであろうエレンを探すと、何やらアニと会話しているのを見つけた。――遠すぎる為、何を話しているのかは分からないが。――


アニといえば、
演習こそサボってはいるが、彼女の対人格闘技は物凄い。
小柄な体格からは想像出来ないが、大きな男ですら得意の蹴り技で投げ飛ばす術を身につけている。


「アニが先生じゃあ…ジャンに勝ち目は無いんじゃない?」

「あはは…」

「…誰が勝ち目無いって?」

「うわっ…ジャン!…びっくりしたー」


急に声が掛かった方を見れば少し息を荒らげたジャンが立っていた。
いつの間にここに来たのやら。


お疲れ様。
マルコはそうジャンに声を掛け、じゃあ僕は違う人と組むから、と抜けてしまった。


「私たちに気を使ったのかな?相変わらず優しいねーマルコは」

「ったく、気ィ使う必要ねえって言ってんのによォ…」


気を使う親友を気にかけるジャンを見ると、ああ…類は友を呼ぶとは良く言ったもんだなと思う。



「訓練はもういいの?」

「あ?…良くはねえけど、この時間くらいしか休めねえからよ。」


貴重な時間だろ?と私に同意を求めているが、本当の所は少し違うのだろう。


本当は、私に会うため。

厳しい訓練の中、こうやってゆっくり会話を交わせる時間というのはなかなか貴重なもので。

少し前に私が彼に言ったのだ。
ジャンと堂々と話していられるこの時間が好きだ…と。


もしかしたらまだ練習していたいのかもしれないが、私と話すため、中断してくれたのだ。



「ジャンもマルコも…優しいよね」

「はぁ!?…マルコは分かるが…俺も、か!?」

「うん。ジャンも!」

「あ…そうかよ…」


彼がそっぽ向いたのはきっと照れ隠しだ。


「さて、と。練習戻るか。」

「うん、頑張ってね!」

「お前もサボってばっかいねーで練習しろよ?」


ジャンに言われたくないよと口にしようとして止めた。
今頑張ってる彼をあまりからかうのもよくないよな、と思ったから。



相手を探しているジャンは、思いついたように私の方に振り返り言った。




「おい、なまえ!演習やるならマルコとやってもらえよ!」




なんで?って思いながらわかったーと返すと、よし、と安心したような態度を取った後、相手を探していた。






至福の時間をくれるのは。
(なんでやるならマルコとなの?)
(あはは…成程ね。…食事の時にでも聞いてみなよ)





____________


夢主が誰かと(演習)やって怪我して欲しくないからその辺理解してくれそうな親友のマルコに託すっていうジャン。


ちなみにジャン自身が夢主と組まないのは間違えて怪我させたらどうしようって思ってるから。(対人格闘技に自信ない)


…っていうのを続編的な感じで書けたらなって思う。恋愛要素をもっと入れて。←