寒い日には部屋に籠るに限る。(進撃/リヴァイ)








「え!今日も訓練すんの!?寒いよ!死ぬよ!馬鹿なんじゃないの!!?」









寒い日には部屋に籠るに限る。






その一言を浴びせた相手からは直後、パシリと軽く頭を叩かれた。



「馬鹿はてめえだろーが。じゃあなんだ?こういう悪天候の日は奴等は休んでくれんのか?」


私がなにに対して上司に抗議したのか。
それはこの大雪の降る極寒の中での立体機動の訓練だった。

冬場は寒くてそれなのにびゅんびゅん風を切って飛び回るようなそれはもともと嫌だったのだが、今日はそれに付け加え大雪というオプション付き。



兵長のいう「奴等」とは、もちろん巨人の事だ。



「休んで…くれますよ。寒すぎて冬眠するんじゃないですかね。」

「…。殴られてぇのかてめえは」


切実な私の望みだというのに彼はそれを一刀両断した。


「冬眠かあ!面白い事をいうね、なまえ!」


いきなり現れた声にびっくりしながら振り返ると、そこにはハンジがいた。

と、いうよりも、
声が聞こえた瞬間、目の前のリヴァイの面倒そうな顔をみればおおよそだれが来たのか分かったのだが。


「巨人は冬眠するのかしないのか!面白そうだね!そもそも巨人は寒さに強いのかな?…皮膚が熱いくらいなんだから寒さには強いんだろうけど…それを言ったらまずあの子たちは温度って感じてんのかな?」


しまった。
ハンジさんの変なスイッチはいっちゃった!

ぶつぶつと自論を考え始めたハンジはもうどうすることもできない。
リヴァイの顔をみてみれば呆れ返っているのが伺えた。


「ねえ、リヴァイ!調べたい事も出来たし、ちょっとエレン貸してよ!」

「断る」

「うお!早ぇなwww」


間髪入れずに断りをいれるリヴァイとハンジのやり取りは見てるこっちからすれば最早漫才にも見えてくる。


だがしかし。
こんなものを微笑ましいと、ただ純粋に見てる私ではない。

先程ハンジが話題を反らしてくれた瞬間から、実はどう訓練をサボるか、または変更させるかに頭を悩ませていた。


ぶっちゃけ、前者をやればぶっ飛ばされるのが目に見えたので出来れば後者。



リヴァイが変更せざるを得ないような内容。
何かないだろうか。何か。



私が辺りを見回しながらそれを考えていたからか、それともリヴァイとハンジは話し合いに夢中になっていたからか、
私は遠くからこちらに近付いてくるぺトラとエレンの姿をいち早く捉えた。

彼女たちは確か掃除をしていたはず。
ああ、終ったと報告に来たのか…。


まてよ、


掃除?




「そっか!その手があった!」


思わず大声で叫んだ私に話していたリヴァイとハンジが一斉に私を見た。



「兵長、やっぱ訓練は中止しましょう!」

「あ?」

「他にすべき事が有るじゃないですか!」

「どうした?お前、とうとう頭やられたか?」

「掃除ですよ!」

「…意味が分からねぇ。」

「大掃しましょう!掃除は意外とハードですからちょっとした運動と同じですよ!効率良くないですかね!」

「…。」


おっと!
リヴァイ兵長が黙った!

これは脈アリなのでは!?




「リヴァイ兵長、」

私が黙らせたところで、丁度ぺトラとエレンはこちらにたどり着いた様だった。


二人をみて、リヴァイも掃除を任せていた事を思い出したようだった。


「掃除、終わりましたよ」

「…今、確認に行く。」

「あ、あの…兵長、」


二人が掃除していたであろう部屋に向かおうとしたリヴァイにぺトラがストップをかけた。



「何だ」

「それが…大変申しにくいのですが…」


話そうとするぺトラの顔が青ざめる。
言葉にしたくなさそうなぺトラに代わり、エレンが続ける。


「ここへくる途中、あまり掃除されてない部屋があったので掃除をしようと思ったんですが…」

ぺトラは思い出すのも苦だと言うように手で耳を覆う。

エレンも歯切れ悪くだが、続ける。


「幾つか物を動かした際、…奴等が…いたんです」



奴等…?
部屋にいたくらいなんだから巨人を指しているわけではなさそうだ。


「奴が出た…だと?それも複数だってのか…」


リヴァイは直ぐに「奴等」が何なのか察知したらしく、強ばっている。


…ていうか、え、
兵長がここまで気を引き締めるような敵って…何者!?




「分かった。…おいなまえ、よかったな。お前の願っていた通りになりそうだぞ」


「…はい?」




なんだかよくわからないが、
私の思惑は成功したらしい。







寒い日には部屋に籠るに限る。
(さて。部屋に案内しろ)
(いよっしゃあああ!!あったまろう!!)
(よーしなまえ、窓開けろ)
(え、)


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この今日の大雪の中でも会社とかに行かなきゃいけない人は大変だなあと思って書いた文(笑)

↓オマケです。ギャグなのでキャラ崩壊注意で。

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おまけ…ギャグ




「おい、エレン。お前、この部屋で何がしたい?」

「早く部屋に入って奴等をぶっ殺したいです」

「…悪くねえ」




「ねえ、ハンジさん。なんかどっかで聞いたことあるやり取りなんですけど」

「ぶはっwww名言の無駄遣いwww」

「兵長、エレン、なんでもいいんで早く奴等を追い払って貰えますか」

「ぺトラちゃん、大丈夫…?」