好きの条件(火黒)





「私はたぶん火黒さん。あなたが好き。」


「面白いこと言うねえ君も。いやー俺が人間に好かれる日がくるとはねえ。それとも、お前が只の物好きなだけか?」


たぶん、好き。
私はよく分からなかった。
人が妖を好きになることがあるのか。
でも、私が抱いてしまったこの想いは恐らく…「恋」


「あーでも一人いたなあ。お前の逆だが、妖が人間を愛した奴。」

けらけらと笑いながら告げる。

(ていうか、私の告白スルーなの!?)

元々、飄々とした性格の火黒は私が何言っても動じないのは知っていたが。


仕方なくなまえは自らの告白話を無かったことにして、火黒が話した話に焦点を持って行く。

「…誰なんですか。それ」

私の質問に気を良くしたらしい火黒は更に機嫌の良い笑みを浮かべた。















「藍緋さん、人間を…好きになったことあるんですか?」










私の問い掛けた言葉に、彼女はピクリと反応した。
触れられたくない、話だったのだろうということはわかっていたが、触れられずに居られなかった。


「…その話、誰から聞いた」

「…火黒…さん」

ふう、と静かに溜息をついて藍緋はなまえをじろりと見る。
軽くだが、殺気が感じられてなまえは不覚にも動けなかった。

「…あいつの話をそう簡単に信じるな。」

「…何でですか?」

「あいつは話を美談する癖がある。信憑性はあっても嘘かもしれないぞ」

藍緋は両手を着ている白衣のポケットにしまい込んでなまえから視線を逸らし部屋を去ろうとした。

「待って!待って下さい藍緋さん!妖が人を好きになってはいけないんですか!?」

「…私にとって、人間は餌でしかない」

少し立ち止まった彼女に期待したが、なまえの望むような答えは言ってくれなかった。それ以降は何も語らず、部屋を出た。





暫くなまえはその部屋でじっと考え込んだ。妖と人。人と妖。

妖混じりの私は元を辿れば人間。この城に住んでいるのは殆ど妖。勿論、火黒も妖。
人と妖、この二つが相対する関係性でしか無いというのなら、私が火黒に抱いてしまったこの想いは何だと言うのだ。
どうすれば良いと言うのだ。


(藍緋さんも同じ考えを持っていたって期待したのに…)








部屋を出た藍緋は直ぐに自分たちを高みの見物していた奴に気付いた。

「いつからいた?」

「最初から…って分かってんだろ?」

解せない奴だ、と顔で語りながらも口で語ることはなく、藍緋は火黒との視線を逸らした。

「お前、なまえには嘘でも優しい言葉を選べ。人間はすぐに傷付く。」

「んなめんどくせぇ真似、俺が出来ると思ってんの?てかさ。そんなにあの子、大事なわけ?妖混じりったって弱ぇーじゃん」

「姫様の大事な話相手だ」

突然掛けられたら声に両者共に振り返る。

「白!」

「火黒、なまえはまだ使えるんだ。変なん気を起こすなよ」

「ははっ!白もあんま俺を舐めんなよ?俺があいつに恋だの愛だの…」

「俺が言いたかったのは殺すなということだ。」

「…あっそ。気をつけるよ。じゃ、俺は先に失礼するよ」


言うが早いか、その言葉を最後に持ち前のスピードで姿を消した。


火黒は自分の言葉に自分でも驚いていた。

「恋だの愛だの…」

(これじゃ、俺もあいつを意識してるってことだよな。)


よくわからない感情に少しイラつきを覚えながら、
火黒はスピードを変えずに走り続けた。







_____________

なんだろこれ。
ただ、火黒と藍緋好きだったなーって思って書いてたらこうなった。←

結界師の中で誰が一番好きかって言うと、火黒。