バス待ち一時間半。



*幼なじみ設定



「バス…来ないねぇ」






バス待ち一時間半









とある「ど」が着くほどの田舎に彼と二人で来たのは私の「課題研究やらなきゃだからついて来て」という我が儘からだった。


「なまえちん、仕方ないよ〜、田舎だもん。バスは一時間に一本とか…そんな感じでしょ?」

「いや、そうだけどさ。真冬に一時間はキツイよー。先生も何でこんな課題出すかなぁ。」


真冬と言っても今日は幸い日が出ている方で、日が当たる背中は仄かに暖かかった。


「ま、気長に待とうよ〜。あ、お菓子食べる?」

紫原は先程封を空けたポテチを差し出した。

私は一枚手に取ってそのまま口へ運ぶ。
が、なんだか良くわからない味わいが口の中で織り成される。


「ん?…敦くん、これ何味?」

「んー?たらこスパゲティー味」

「…相変わらず良くわからない味食べてるんだね…」

「新発売してたからさー。でもさ、意外と美味しくない?」


美味しく無い…こともないが、格別美味しい!とも良い難い。




「…暇だなあ」

周りは田舎なだけに静かなもので。隣で彼がポテチ食べる音がやけに大きく聞こえる。

「…ところでさぁ。なまえちんは、なんで俺を誘ったの?」

不意に紫原が問い掛けてきた。

あ、確かに。

一人で行くのは寂しくて誰かを誘いたかったのは事実だが、別にそれは誰でもよかったわけで。

…気付いたら彼を誘ってた。


「女友達との方が盛り上がるんじゃない?」

「なんだろ…好きだから?」

「なにそれ。告白?」

ふと、口から自然に出てきた言葉。

言ってから私は言葉の意味を考え、気付いて恥ずかしくなった。


「あ、いや、だからっ!そういう意味じゃなくてっ」

「俺は好きだよ。なまえちんが。恋愛感情でね」

「えっ」

「あ、バス来たよ」


目の前にバスが停車してそれに乗る。

バスの中は暖房が効いていて暖かい。


結局地元に帰るバスの中では一言も話すことなく。おかげで私はずっと彼のことを意識することになった。


バスを降りても身体が何となくほてっていたのは、きっと彼のせい。






バス待ち一時間半
(…私、敦くんのこと、恋愛感情で「好き」なのかな?)



________

幼なじみ設定じゃなくても多分いける。

恋の馴れ初め。

紫原はふとした瞬間に告白しそう。