嘘ってのは嘘。




「ねえ…私達、別れよ?」










嘘ってのは嘘。



4月1日。人々はそれをエイプリルフールと呼び、その日だけは、嘘をついても許される日という。


当然、そんな美味しい企画がある日になまえが何も考えてない筈が無く、彼氏の紫原敦に別れ話を持ち出してみることにした。

しかし、それは 勿論、本気で別れようと思って言った訳では無く、エイプリルフールの冗談だ。


笑いそうになることに堪えられなくて歪みそうになる顔を必死に堪えながら紫原の返事を待つ。


しかし、彼の口から出てきたのは私にとって最も予想していなかった言葉だった。


「あれ?俺たち…付き合ってたっけ〜?」

「…は?」


頭がついて行かなかった。

付き合っていたか?

そりゃあそうだ。だってデートも何回かした筈だ。



まさか…全部私の妄想っ!?


そんな馬鹿な!


それでは私はどれだけ恥ずかしい奴なんだ!!




なまえがあたふたしながら考えていると急に紫原がぷっと吹き出した。


「あははは〜、なまえちん超うける〜」

「え、何!?…ちがっ…だって!」


妄想で付き合ってると思っていたんだと思われたことに対して笑われたんだと感じて、一気に顔が熱くなる。


「…もう、あの、忘れてよ!…あれ、今日エイプリルフールだから騙そうと思っただけなのっ!!」

「やっぱり〜?今日エイプリルフールだもんね〜」

「そうだよ…って、え?私の嘘、解ってたの?」

「うん。なまえちんも俺が嘘ついたって解った?」

「え、嘘?…あっ!まさか…」

そう。思い当たる節と言えばアレしかない。


「うん。なまえちんは俺の彼女でしょ〜?」

「なんだ…アレ、嘘だったの?…よかったー」


なまえはほっと肩を下ろした。

そんななまえの姿を見てか、紫原がなまえの頭を撫でた。


「大丈夫だよ〜。ちゃんと俺はなまえちんの彼氏さんだから」

「うん。…でもエイプリルフールだからって脅かさ無いでよ。」


私の言葉に紫原は肯定と否定もせず、ただニコッと人の良い笑みを向けただけだった。








嘘ってのは嘘。
(エイプリルフールなんだから許してよ〜)
(…解ってない…)





__________

一日遅れのエイプリルフールねた。

紫原って騙されなさそう。




2011.4.2(Sat)