あおいそら

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はっけん

 湯船に湯を張りながら、脱衣所でこんのすけをくるくる回して確認する。…が、どこがどうなって停止してるのかさっぱり分からない。
 こうなったら致し方がない、天下の宝刀…とりあえず叩いたら直る。を実行しよう。

 おらぁ!起きろぉ!!

 心の中で罵声を浴びせながら、最初は軽く、段々強く。今この場に誰かが入ってきたら、無表情でこんのすけを叩く千子村正という、なんともいえない状態できっと困るだろうなぁ。

「おい、主が呼んで……は?」

 勢い良く開いた扉の向こうには長谷部が、なんともいえない表情で立っている。
 うわ、やっべ…見られた。と動揺を必死で隠しつつ、どうかしましたか?と今更すぎる笑みを浮かべて聞くが…長谷部の視線は私の右手。というか、こんのすけに注がれている。

「お前、それは…」

「あぁ、これですか?
 …拾いました、主の部屋で」

「っ、貸せっ!!」

 見やすいようにこんのすけを長谷部の目の前に掲げると、勢い良く奪い取られた。
 なんだなんだ〜?と思いつつ、腕を組んで長谷部を見ると…わし掴んだこんのすけの尻尾を思いっきり引っ張っていた。

 あいやーーー!こんのすけぇぇぇえ!やめたげてよーー!!

 思わず出た右手が中途半端な形で止った瞬間、――ブン。という微かな電子音が聞こえた。

『――式神No.iwami1976-k29 こんのすけ 再起動します。
 また、再起動には数秒かかります――』

 そして謎の声と共にこんのすけは長谷部の手からゆっくりと宙に浮いて静止、したかと思うとパッチリとこんのすけが瞬き、床に着地した。
 その間、私も長谷部もキョトンとした顔でその一連の動きを凝視していた。

「――長谷部さま、お久しゅうございます!
 っと、そんなことより審神者さまは!?
 刀剣の皆さまはどうなっておりますか!!?」

 そして、怒濤の如く長谷部にすがりつき話し始めたこんのすけにドン引きしつつ、当初の目的――通補しよ。を思い出して、ベリッと引きはがして止めた。

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- ©2015/11/17/Thu/AOISORA -