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▼ 鶯丸
今日の近侍は…鶯丸。
「主、そろそろ茶にしよう」
さっきからこの人は茶にしようと煩く、政府に提出しなくてはならない書類作成が全く進まない。
それに…あんまり手伝ってくれない。のんびり、大雑把な性格なのは知っていたので…最初からさほど期待はしていなかったが、想像通りというか、想像以上に茶を飲もうとしてくる。こりゃ驚きだな。いらんけど。
「そうだね…一旦休憩にしようか」
まだ八つ時には早いけど…うっさいし、丁度切りの良いところだからそう告げると、鶯丸は素早い動きで立ち上がり、
「では、俺は茶と菓子を取ってくる」
と言い残して消えた。こういう時だけ無駄に素早いみたいなんだけど、是非その謎の機動力を戦闘中に発揮して欲しい…。
すぐに戻ってくるだろう鶯丸を待つ間、PCをスリープモードに切り替えて、ちゃぶ台を出したりと茶の準備をする。
そういえば朝食の時に燭台切が、今日は洋菓子に挑戦するんだ。とか言ってた気がするから…今日のおやつは洋菓子、たぶんクッキーかな?だったらチョコチップがいいなー。なんて考えている間に鶯丸が戻ってきた。
「戻ったぞ」
「おかえり!鶯丸、今日のお菓子は何?」
部屋に入ってきた鶯丸に近付いてお盆を覗き込むと、急須と湯飲みが2つ、それから…すこーん。チョコの入ったやつ。
えっと、ちょっと待って?洋菓子だとは聞いていたけど、スコーンとか予想外なんですが。いや、スコーン美味しいですけども!
昨日まで芋羊羹を作ってたヤツがまさかスコーンを作るだなんて、私は想像してなかったぞ!?
「今日の菓子は、ちょこちっぷすこーん…だそうだ。
茶は、主の好きな柚子茶だ」
「あぁ、うん。そう…ありがとう」
適当な返事を返しつつ、指定位置の座布団に座った。
鶯丸は、そんな私に不思議そうな顔をしつつもいつも通りに茶を入れてくれた。
彼の入れたお茶は美味い。私が同じように入れても同じ味は出せないのに、明らかに大雑把に蒸らしていても…何故か美味い。多分、お茶の妖精か何かなんだ。と密かに私は思っている。
微妙な気持ちのまま、スコーンをかじる。恐らく初めて作っただろう美味しいスコーンに、口の中の水分が持って行かれる。ので、すかさずお茶を…飲めない。湯飲みに伸ばした手を、そっと引っ込めた。
「あぁ、主は猫舌だったな。
どれ…俺が冷ましてやろう」
私の湯飲み奪い、ふーふー。と息を吹きかけて冷まそうとするのは、お茶を飲むときによくされることで、鶯丸だけでなく、髭切や三日月まで冷まそうとしてくる。鶯丸や三日月はともかく、髭切の場合は親切で言ってくれてるので…なおタチが悪い。
今回も、ふーふー。されないように素早く湯飲みの上に手を置き、阻止する。
「冷めるまで待つから結構です」
「それは残念だ」
口の中がパッサパサなのを我慢しつつ、鶯丸を警戒するように見ると、面白そうに笑われた。毎度のことではあるが、誠に遺憾である。
熱いお茶を飲むのは一旦諦めて、モサモサとスコーンを食べることにする。
39番目の私の刀
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