あおいそら

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燃える思い出

 屋敷が、燃えている。
 暖炉の火が燃え移ったのか、あっという間に炎は燃え広がり…屋敷を包み込んだ。
 さっきまでピオニーやジェイド、サフィールと勉強していたのに、そんな様子も一瞬でかき消えてしまった。
 …ああ、ゲルダと一緒に準備した教材も、子供達と笑い合った教室も、全部燃えている。

「――速く逃げなさい!」

 ゲルダの叫び声で我に返った。ピオニー達と外へ速く逃げなくては。そう思った瞬間、火にまかれた柱が崩れ落ち…ゲルダと私を引き裂いた。

「ゲルダさん!」

「私は大丈夫だから。クコ、子供達をお願いね」

「せ、先生――?」

 思わず手を伸ばすと、柱と柱の間から見えるゲルダが微笑んだ。…大丈夫なわけが無い。でも、ここで犬死にしてはゲルダに申し訳ない。
 泣いているサフィールの背を押して、先に行っているピオニーやジェイドの方へと向かわせる。

「速く逃げよう!」

「で、でも…先生がっ!!」

「いいから!私達まで死んじゃう!!」

 私より身長の高いサフィールが私を押しのけて、ゲルダの所へ行こうとするのを必死に止めてやっと玄関へと到着した。
 これでこの子達はもう安心、とピオニーやジェイドに微笑んだ。

「ジェー、サフィーをお願いしても…」

「クコ、危ないっ!!」

 あと一歩で外、という時にジェイドがさっき以上に顔色を変えて叫んでいる。首を傾げて、ジェイドの指さす頭上へと視線を向けると…真っ赤に燃える瓦礫が落ちてきているのが見えた。
 ――もう、絶対間に合わない。

「…生きて」

 さっき浮かべた笑顔のまま、そう言ったつもりだけど…ちゃんと3人に伝わっただろうか?
 頬を伝う何かを感じながら、私の視界は赤に、そして白く塗りつぶされていった。


 ごめんね、私まで死んじゃった。もし次があるなら――もっと上手くやってみせる。だからその時は、笑顔で会いましょう?

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- ©2015/11/17/Thu/AOISORA -