あおいそら

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Lemon Cake

 今日も今日とてポアロです。
 とはいっても、別に毎日来ているわけではないので、そこはお間違いのないようにお願いします。

「いらっしゃいませ、雨草さん!
 安室さんは今居ないんですが…ゆっくりしていって下さいね」

 入店と共に梓さんが笑顔で私に告げるが、何故毎回安室さん情報をくれるのか。
 疑問はつきないけど、私の中の何かが考えない方がいいと告げているので、あえて梓さんに聞かないでいる。

 ともかく適当に笑顔で、そうなんですか。と答えて好んでいつも座っている席に腰を下ろす。

「今日もホットミルクティーですか?」

「それと、レモンケーキもお願いします」

 かしこまりました。と笑顔で去って行く梓さんを見送って、コッソリ溜め息をつく。
 苗字を教えてからというもの、何故かぐいぐいくる店員さんにゲッソリである。
 梓さんはともかく、何故安室さんも頻繁に声をかけてくるのか全く分からないし…周りの女性陣からの鋭い視線が痛い。辛い。
 まったく、こんな一般人の何が面白いのか!などと思いつつ、ノコノコとやって来ているわけですが。
 今日は安室さんが居ない…?ラッキー!と心が浮き足立つのを押さえるものの、思わず笑みが浮かぶのは致し方ない。

「只今戻りました。
 …あれ、雨草さん来てたんですか。いらっしゃい」

 うふふふふー。と脳内お花畑だった私の目の前に、直視したくない現実が現れた。
 …そう、ヤツ――安室さんだ!

「…お邪魔してます」

 一瞬で自分でも分かるほど目が死んだのが分かったけれど、こればっかりは仕方が無い。
 私はイケメンな安室さんをそっと観察したかっただけで、関わりたい訳ではないのだから。
 そんなことを考えている間に、厨房へと引っ込んでいた安室さんが笑顔で私の注文した紅茶とレモンケーキを持って出てきた。
 いや、もしかしたら私の他に同じ注文をしたお客さんの品かもしれない…って、まだ頼んだものが来てないのは私だけだ…。

「お待たせしました、ホットミルクティーとレモンケーキです。
 お砂糖は3つ…ですよね?」

 相変わらず良い笑顔の安室さんが、紅茶をカップに注いで砂糖を入れてくれる。
 そのお気持ちは大変ありがたいのですが…以下略。なのである。
 羨ましそうにこっちを凝視するお姉様方の視線で普通に死にそう。

「ありがとうございます…」

「いえいえ。
 ところで雨草さんは今日どうしてこちらへ?」

 さらに追い打ちをかけるように安室さんが私に質問してくるからもう…!
 それに、内容が私を探るようなものな気がするし、辛すぎる。
 だからといってポアロに来ないという選択肢もない…だってケーキ美味しいし!

「…急にレモンケーキが食べたくなったので」

「そうでしたか…。
 もしかして、僕に会いに来てくれたんじゃないかと期待したんですけど…違ってたみたいですね」

 少し悲しげな表情で安室さんがそう告げると、いっそう周りの視線がキツくなった。
 ついでに、言われた私はウッカリときめいた。
 最初は安室さん目当てだったけど、安室さんに話しかけられるようになった今ではケーキ目当てである。
 安室さん、私のことほっといてくれないかなぁ…切実に。


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