あおいそら

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はじまり

 - 鏡草 -

 成り代わり。

 好きだった夢小説の設定の一つ。
 だけど。
 だけどさ!

 なりたいなんて思ってなかったんだけど!?

「姫若子、何を難しい顔をしておるのだ」

 縁側で足をプラプラさせて座っていたら、父の友人の息子の松寿丸くんが遊びに来てたらしい。
 それにしても、相変わらず上から目線である。

 っと、ここまでの話でいったいなんのこっちゃな方に説明しよう!

 えっと、私こと弥三郎――通称、姫若子は長曾我部 元親の幼名で、松寿丸くんは毛利 元就の幼名である。
 それにしても、まさか父上と松寿丸くんの父上が仲良かったなんて知らなかったなぁ。

「聞いておるのか!」

 ――べちん

「痛いよ、松寿丸くん…」

 うっかり考え込んでいた私に一撃を喰らわせた松寿丸くんはなんだか機嫌が悪そうである。

「で、何を考えておった」

「別に、なんで僕がこんな格好してるのかなって思ってただけだよ」

 そう、父上が生まれてすぐの私に対して一言、「よし!この子は男として育てよう!」なんてテキトーな事を言ったばかりに男として育てられることになったというのに、なぜかかわいらしい着物ばかり着せられる。
 つまり今の私は男装して女装しているという訳のわからない状態。
 男が小さい頃女の子の格好をさせるというのは厄除けか何かで(曖昧)よくあった事らしいけど、何故こんなことに、と思わなくもない。
 今着ている服は薄紫っていうか、長曾我部色の着物で可愛いんだけどさ!

「…好きで着ているのではないのか?」

 はぁ、とため息をついていると、松寿丸くんから予想外のコメント。

「えー、松寿丸くんはそう思ってたんだ」

 余計傷つくなぁ、と行儀が悪いなと思いつつ床にぐったり寝そべる。
 そのまま、なんとなく床をゴロゴロ転がる。

「我は…その、似合ってると…」

 ボソボソと聞こえないか聞こえるかギリギリの声量で松寿丸くんが呟いたのが聞こえた。
 ギョッっとして見つめてみると、うつむいて見えにくいけど、耳が赤い!
 えっ、なんのフラグですか!?ツンデレフラグですか!!?
 思わず脳内で訳がわからない事を考えてしまうくらいに、彼の性格的にはあり得ない発言に吃驚してしまったのだった。


2014/07/06

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