あおいそら

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...ですよね

「おっ、リルム様!」

 ――主上がのんきな顔で入店してきた!
 らっしゃい!と驚くことなく豪快な笑顔で言い放った様子をみるに、主上は数回この店に来たことがあるのだろう、なんて考えながら素早く主上から視線を逸らして手元のグラスを凝視する。
 恐らく主上自身は私に気がつかないだろうという謎の確信はあるけれど、主上の中の智慧之王さんという名の頭脳は一瞬で私だと見破っていることだろう。
 いつの間にか流れる背中の冷や汗を感じながら、短いけれど長い時間を耐えるように、全然気にしてませんよー、アピールを必死にする。

「いやー、やっぱ落ち着くわー。
 あ、いつもので」

 軽い動作で何故か私の隣に主上が腰掛けた。
 確かに私の隣の席は空いていたし、入ってすぐで確かに座りやすいポイントだったかもしれないけど。
 だけども!なぜそこに座りやがったのですか!?
 バクバクと打つ己の心臓に落ち着けと諫めつつ、チラリと主上を見やると目が合った。

「――え、お前……リアン?」

 驚き固まる私と驚き目を見開く主上。

「……ご馳走様でした!」

 素早くお金を机の上に叩きつけながら立ち上がり、店を後にするべく踵を返した瞬間、ガッチリと肩を掴まれた。
 もちろん肩を掴んだのは、主上である。

「ちょっと話をしようか」

 主上は良い笑顔であった。
 その笑顔の威圧感に耐えられず、思わず頷いてしまった。

「それじゃあ、明日!」

 頷いてしまったことに後悔しながら、不敵な笑みをたたえた主上に一礼し、トボトボと宿に戻った。


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