▼ 出来心
丁度、目の前に十四松くんが歩いているのが見えた。
声をかけようと思った瞬間、好奇心というかイタズラ心がわいてしまって、コッソリ近づいて振り向く方に指を出してスタンバイ。
「十四松くーん」
「あいあい」
思った通りの方を向いてくれて、やったー!と喜んだ瞬間…場所が悪かったのか、それとも運が悪かったのか、ぷにっ。くらいのつもりが、ぶっすりと人差し指がほっぺに刺さってしまって…少しヤバイ顔になっている。
「ごめんなさい…1度やってみたかったの」
勢いよくほっぺたから指を引抜いて、頭を全力で下げて謝りながら、十四松くんから距離をとる。
こんな事になるなら、しなければよかった…。と、恥ずかしさと後悔が頭の中でグルグルと踊りまわる。
「…ねぇ!」
「え?」
ギュッと目をつぶったまま頭を上げられずにじっとしていると、思ったより近くから十四松くんの声が聞こえて、驚いて顔を上げると…ゴツン。とおでことおでこが…いったー!
「さっきのお返し〜」
思いの外の衝撃をおでこに受けて、思わず涙目になりながら十四松くんを見ると、
全然痛そうな表情じゃなくて、してやったり!な表情で、えへへっ。と笑っていた。
ボンヤリと十四松くんって石頭なんだなぁ…。と十四松くんの目を見つめる。
…十四松くんのおでこと私のおでこが、ごっつんこしていて顔が非常に近いことに気がついてしまって、ボッと顔が赤くなったのが自分でもわかってしまった。
さっきよりも大きな混乱で動けず、十四松くんの顔を見つめていると…急に十四松くんの顔が真っ赤になったかと思うと、目に止まらぬ速さで飛び退いた。
「ご、ごめんな三冠王!」
「う、うん」
大丈夫だよ。とモゴモゴと返事を返しながら、自分の顔に両手を当てて顔を隠しながら、早く真っ赤な顔が元に戻ること祈った。
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