▼ 兄には内緒です
いつの間にか蝉が鳴きはじめて、あぁ夏だな。と縁側で蚊取り線香にくすぶられながら団扇で風をおこす。
今日も、兄たちの大半はニートを満喫すべく涼しい所…たとえばパチンコだったり、コンビニだったりと出かけているようで、大変静かです。
正午も過ぎて、暑くなってきたので緩慢な動きで立ち上がって部屋を横断すると、家に引きこもって猫と戯れている一松兄さんに声をかけられた。
「…トド松、どこ行くの」
「ちょっと涼みに」
まぁ、嘘だけど。
今からバイトとかバレたら面倒な事になることが今までの経験から分かっているので、平然と嘘をつく。
聞いてきたクセに興味無さそうな返事をした兄さんにホッとしながら、カバンを持って玄関から出た。
家の中の方が涼しかったのか、家の外は陽炎の様に揺れていて…見ただけで暑くなってくる。
とりあえず、バイトに遅れないように、兄たちにバレないように素早く目的地まで急いだ。
まだバイトを初めてから1週間ほどしか経ってないけど、あと何日安寧なバイト生活を過ごせるのか…それが目下の悩みです。
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