フェクダ  



 


突然城の中に響き渡るブザー音。スクリーンに映し出される文字と数字。

――ボンゴレの裏からの速報だとっ?!

暗号を解析した結果、それはパルゾナ16のボスが暗殺されたというしらせだった。



「緊急会議だぁ!直ちに幹部は会議室に上がれぇ!!!」



有無を言わずに談話室にいたルッスーリアとベルフェゴールはスクアーロに着いて行った。





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その日は会議で潰れたが、とある筋からの情報が手伝って少しは手懸かりが掴めたが、決定的となる証拠は得られない間々、またしても暗殺対象が先に殺されてしまった。



「…これは俺らの面子にも関わる……」



朝から一人スクアーロは激しく悩んでいた。
数日前のネドルバファミリーのボスであるリオ・ボーナ暗殺に加え、昨日またパルゾナ16のルグゼル・パルゾナが暗殺された。しかもリオ・ボーナ暗殺の時と同様に、殺されてからまた火が点けられた所を発見されたらしい。





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この間のリオ・ボーナ焼死体が発見されたのがローマ市街のN-18。そしてパルゾナ16のボス、ルグゼル・パルゾナはそこからさほど離れていない、H-29で発見された。



「この男も……マフィア関係者で、パルゾナ16と言うファミリーのボスです。」

「またマフィアか…」

「全く、裏の奴がよく こっち に通報くるな……」



上司のお偉い連中はこの会議に興味が無いらしい。先程から裏世界の悪口しか言ってないし、寝ている奴もいるくらいだ。その怠た空気の中、場の空気を一掃したのは外面がいいアンドレの言葉だ。



「まあまあ、みなさん。一応こちらに回ってきた殺人事件です。
 それで、ティーナ。そのパルゾナ16はどのようなファミリーで?」

「ああ、はい。パルゾナ16はネドルバファミリーと同じ、北部に強い影響を与えるファミリーですね。」

「それ以外に何か情報は?」

「いえ、特には……。ただネドルバファミリーとは違って薬などには手を染めていない、比較的善良な方のファミリーでしょうか。」

「ふんっ。マフィア風情に善いも悪いも無いわ!マフィアは全て悪だ悪っ!!」

「っな!それは言い掛かr‥」



今まで寝ていた上司が起きたと思ったらこの言葉だ。マフィアは全て悪だと勝手に決め付けてやがる。思わず喰ってかかろうとした所を隣にいたアンドレに止められる。目を見ると、「今は辞めとけ!」と釘をさしてくる。

くっ。

自分の今の階級じゃ、どうにも彼等を抑えることは出来るはずもなく、無力な自分の存在が更に悔しさを増幅させる。握りしめた拳の中で資料が苦しそうになっている。


その日の会議も結局アンドレに上手く纏められ、特に何の解決策も出ない間々お開きとなった。





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「ししっ♪ここだよな、マーモン?」

「そうだよ、此処がオリゾネファミリーのアジト」



夜の03:00を過ぎた頃、忍び寄る二つの黒い影。



「ボスはさー、あんなこと言ってたけど…俺とお前がいたら十分じゃね?」

「普通に考えたら、お釣りがくるよね。こんなTレベルの弱小ファミリーを殺戮るくらい。」

「だよなー」

「でも……ボスは、いい加減獲物を仕留めたいんじゃ無いのかい?獲物を横取りされたら誰だっていい気分じゃないだろ?」

「まあ、ボスの気持ちも解らないことはないな。王子も久し振りに暴れたいし。」



暴れる程大規模なファミリーじゃないよ。と言うマーモンの声は無視して、正々堂々と正面玄関からオリゾネファミリーのアジトに侵入する。
いくら、弱小ファミリーと言えど、正直この警備力の軽薄さは笑える。正面から侵入したというのに、誰もいないし、防犯カメラや侵入者用のトラップなどもありはしない。



「いくらこんな山奥で夜中とは言え、少し静か過ぎるね」



マーモンは先日のパルゾナ16のボス暗殺を横取りされ、金が入らなかったことから少し慎重になっているようだ。



「ん?もう、ターゲットの寝室じゃね?しししっ♪今回の任務はクリアー出来そうだな」



余裕の表情でベルフェゴールがドアノブに手を伸ばそうとした時。



   ズガーーンッ



部屋の中から銃声が響いた。



「「?」」



ベルフェゴールとマーモンはお互い目を丸くして相手の顔を見てから、ベルフェゴールがナイフでドアを切り裂くと……

燭台を持った人影。



「……っにゃろっ!待ちやがれっ!!」



ベルフェゴールがその男を追おうとした瞬間、彼はその左手から燭台を床に落とすと、一気に ボワッ と火が上る。



「ムム。ガソリンだね…」

「くっそ……火が邪魔して追えねぇ…」



オリゾネファミリーのボスの寝室。入口にベルフェゴールとマーモン。火の柵の向こう側には謎の人影。そしてベッドには先程の銃声で心臓を打ち抜かれ、即死のオリゾネファミリーボス、コボス・マキリエーネ・オリゾネの姿。

行く手を阻まれただ立ち止まっていると、目の前の謎の人影は開かれた窓から外に身を投げ出した。



ユラユラ とカーテンが夜風に靡く中、炎は益々勢いを増し、ベルフェゴールとマーモンも来た道を通りアジトの外へ出て来た。



今回もVARIAは任務を遂行することなく、ターゲットは何物かによって殺されて、火を放たれたのだ。