フェクダ
突然城の中に響き渡るブザー音。スクリーンに映し出される文字と数字。
――ボンゴレの裏からの速報だとっ?!
暗号を解析した結果、それはパルゾナ16のボスが暗殺されたというしらせだった。
「緊急会議だぁ!直ちに幹部は会議室に上がれぇ!!!」
有無を言わずに談話室にいたルッスーリアとベルフェゴールはスクアーロに着いて行った。
☆★☆★
その日は会議で潰れたが、とある筋からの情報が手伝って少しは手懸かりが掴めたが、決定的となる証拠は得られない間々、またしても暗殺対象が先に殺されてしまった。
「…これは俺らの面子にも関わる……」
朝から一人スクアーロは激しく悩んでいた。
数日前のネドルバファミリーのボスであるリオ・ボーナ暗殺に加え、昨日またパルゾナ16のルグゼル・パルゾナが暗殺された。しかもリオ・ボーナ暗殺の時と同様に、殺されてからまた火が点けられた所を発見されたらしい。
☆★☆★
この間のリオ・ボーナ焼死体が発見されたのがローマ市街のN-18。そしてパルゾナ16のボス、ルグゼル・パルゾナはそこからさほど離れていない、H-29で発見された。
「この男も……マフィア関係者で、パルゾナ16と言うファミリーのボスです。」
「またマフィアか…」
「全く、裏の奴がよく こっち に通報くるな……」
上司のお偉い連中はこの会議に興味が無いらしい。先程から裏世界の悪口しか言ってないし、寝ている奴もいるくらいだ。その怠た空気の中、場の空気を一掃したのは外面がいいアンドレの言葉だ。
「まあまあ、みなさん。一応こちらに回ってきた殺人事件です。
それで、ティーナ。そのパルゾナ16はどのようなファミリーで?」
「ああ、はい。パルゾナ16はネドルバファミリーと同じ、北部に強い影響を与えるファミリーですね。」
「それ以外に何か情報は?」
「いえ、特には……。ただネドルバファミリーとは違って薬などには手を染めていない、比較的善良な方のファミリーでしょうか。」
「ふんっ。マフィア風情に善いも悪いも無いわ!マフィアは全て悪だ悪っ!!」
「っな!それは言い掛かr‥」
今まで寝ていた上司が起きたと思ったらこの言葉だ。マフィアは全て悪だと勝手に決め付けてやがる。思わず喰ってかかろうとした所を隣にいたアンドレに止められる。目を見ると、「今は辞めとけ!」と釘をさしてくる。
くっ。
自分の今の階級じゃ、どうにも彼等を抑えることは出来るはずもなく、無力な自分の存在が更に悔しさを増幅させる。握りしめた拳の中で資料が苦しそうになっている。
その日の会議も結局アンドレに上手く纏められ、特に何の解決策も出ない間々お開きとなった。
☆★☆★
「ししっ♪ここだよな、マーモン?」
「そうだよ、此処がオリゾネファミリーのアジト」
夜の03:00を過ぎた頃、忍び寄る二つの黒い影。
「ボスはさー、あんなこと言ってたけど…俺とお前がいたら十分じゃね?」
「普通に考えたら、お釣りがくるよね。こんなTレベルの弱小ファミリーを殺戮るくらい。」
「だよなー」
「でも……ボスは、いい加減獲物を仕留めたいんじゃ無いのかい?獲物を横取りされたら誰だっていい気分じゃないだろ?」
「まあ、ボスの気持ちも解らないことはないな。王子も久し振りに暴れたいし。」
暴れる程大規模なファミリーじゃないよ。と言うマーモンの声は無視して、正々堂々と正面玄関からオリゾネファミリーのアジトに侵入する。
いくら、弱小ファミリーと言えど、正直この警備力の軽薄さは笑える。正面から侵入したというのに、誰もいないし、防犯カメラや侵入者用のトラップなどもありはしない。
「いくらこんな山奥で夜中とは言え、少し静か過ぎるね」
マーモンは先日のパルゾナ16のボス暗殺を横取りされ、金が入らなかったことから少し慎重になっているようだ。
「ん?もう、ターゲットの寝室じゃね?しししっ♪今回の任務はクリアー出来そうだな」
余裕の表情でベルフェゴールがドアノブに手を伸ばそうとした時。
ズガーーンッ
部屋の中から銃声が響いた。
「「?」」
ベルフェゴールとマーモンはお互い目を丸くして相手の顔を見てから、ベルフェゴールがナイフでドアを切り裂くと……
燭台を持った人影。
「……っにゃろっ!待ちやがれっ!!」
ベルフェゴールがその男を追おうとした瞬間、彼はその左手から燭台を床に落とすと、一気に ボワッ と火が上る。
「ムム。ガソリンだね…」
「くっそ……火が邪魔して追えねぇ…」
オリゾネファミリーのボスの寝室。入口にベルフェゴールとマーモン。火の柵の向こう側には謎の人影。そしてベッドには先程の銃声で心臓を打ち抜かれ、即死のオリゾネファミリーボス、コボス・マキリエーネ・オリゾネの姿。
行く手を阻まれただ立ち止まっていると、目の前の謎の人影は開かれた窓から外に身を投げ出した。
ユラユラ とカーテンが夜風に靡く中、炎は益々勢いを増し、ベルフェゴールとマーモンも来た道を通りアジトの外へ出て来た。
今回もVARIAは任務を遂行することなく、ターゲットは何物かによって殺されて、火を放たれたのだ。
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