大地が白に染まる前(凌+光)
無双OROCHI

「降り始めましたね」
「はい?…ああ、雪か」

詰所から見上げた空、ははらはらと舞い落ち始めた純白の雪。
先程までは穏やかな小春日和だったというのに、これも遠呂智が世界を混沌と化させた影響なのだろうか。―十中八九そうなのだろう。

「凌統殿、大丈夫ですか?」
「そりゃ雪くらいは」
「ですがこう天候が頻繁に変わっては体調を崩してしまうのでは」

例え後世に名を残す名将といえど人間である事には変わりない。
人は身体を鍛える事はできても病への抗体はそう容易く作ることができないのだから、この将も油断をすればすぐに体調を崩しかねないのではないか。
けれどそんな光秀の考えとは裏腹にかの将は泣き黒子を微かに押し上げて自然な笑みを浮かべた。

「生憎それほどヤワじゃないんでね。そういう光秀さんこそ大丈夫なわけ?」
「私…ですか?」
「俺よりよっぽどそういうのに弱そうだけど。それに昨日もろくろく寝てないんじゃ?」
「え?」

確かに昨日中に終わらせてしまいたい執務があった為、光秀は充分な睡眠を取ってはいない。
けれどそれを何故その場にいなかった凌統が知っているのだろうか。
そんな至極当然ともいえる疑問は、あっさりと解明される事となる。

「やーっぱりそうか」
「謀ったのですか?」
「野生の勘ってヤツだね」

そう言って笑う様に毒気がないので怒るに怒れなくなってしまう。
これが得をする人柄というものなのだろうか。いや、そのように考えては失礼である。

「光秀さん?」
「…いえ。私も大丈夫ですのでどうかお気になさらず」
「はいよ。そんじゃ大降りになる前に目的地到着と行きますか!」

手綱を引き騎馬の進行速度を上げたその横顔にはやはり薄らと笑みが浮かんでいた。

「そうですね」

倣うようにして引いた手綱に副うように光秀の騎乗した馬もその速度を上げる。
さあ、早く次なる目的地に着いてしまおう。
出来れば雪が地面を白く染めてしまう前に。


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