戦う理由(策+大)
無双OROCHI


大切な人がいた。その人の為なら戦い続けられると思っていた。
だから、私は武器を手にした。

「孫策様…」

押し寄せる遠呂智の軍勢。圧倒的な兵力の差。敗色は濃い。
それでも私は戦わなければならない。戦って、そして勝ちたい。
けれど現実というものは残酷で、あっという間に敵に包囲されてしまった。
襲ってくる敵は幾ら扇で叩きのめしても、数の底を見せない。疲労も大分溜まってきたのか腕の動きも鈍ってきているような気がする。限界が、近いのかもしれない。

「…嫌」

悟って、そして本音が零れた。
嫌だ。負けたくない。負けるわけにはいかない。
私は絶対に生き抜いて、孫策様のお役に立ちたい。
孫策様のお役に立とうって、私は誓ったの。
だから、こんな所で果てるわけにはいかないのに。
思って振り上げた扇は敵兵の槍によって逆に弾かれてしまった。
手から放れた扇が後方へと飛ばされていく。
掴まないと、と思っても立ちはだかる軍勢が私を阻む。
邪魔しないで。言っても無駄だとわかっていても直感的な感情は止まらない。
けれど、言葉は声になることはなかった。
鋭利な槍の迫る切先。小さく息を飲み込んで、きっと次の瞬間には私は赤く染まっているに違いない。
命の危機に晒されているからなのか、突然動きを緩める時の経過。
けれど、不思議と恐怖はなかった。実感もなかった。
だって私は信じているから。

「大喬!」

伏せることのなかった瞼、瞳に映るのは約束を交えた私の最愛の人。
言葉に出来ない熱い感情が、胸に漲る。同時に、酷く安堵した。

「孫策様!」

込み上げた感情は目頭を熱くさせるけれど、けど私は泣くわけにはいかない。
だってここは戦場、私は孫策様の為に戦い続けるの。



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