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>>忘れられた都1




忘れられた都の、中心部。
かつては大いに栄えていたであろうこの地には、もう人っ子一人おらず時折獣か魔か、とにかく人以外ものの気配しかしなかった。
この都付近には太古には海があったことを窺わせる、海の物をあしらった建造物やオブジェが目についた。きっと漂っていたであろう潮の匂いはしない。
そして人為的に置かれたであろう成人男性の倍の高さはある水晶がところどころに、まばらにあった。
何の為にそんな物を置いたのか生憎分かる者はもういないのだが、しかし、何処となく太古のロマンと言うものを感じる。

暫くはそうして過去に賑わいを見せた都へと思いを馳せたが、ふと中心部に不自然にある透明な下り階段に気付き足を踏み入れてみた。階段は透明なので、当然下の景色は丸見えで、まるで空の上を歩いている気分になる。これは高所恐怖症の人間には色々とたまらないだろう。
地下は此処から見る限りだと、まるで別世界のようだった。
広さは庭も含めたそこそこの大きさ一軒家程度とでも例えれば妥当であろうか。地上ではあまりない緑が大きな水晶を中心に生い茂り、小さな淡く光る青い池もある。幻想的な光景だ。
しかし、生き物のの気配は不思議としなかった。


一段一段降りていく内に、ひんやりと冷える空気が身に纏わりつく。
あまり気分のいいものではないが、彼らが求めるものはこの地下にあるのが適当であると判断した以上、ここで歩みを止める訳にはいかない。
足早に階段を下りていくと、成程生き物がいない訳だと納得した。


階段を降りてすぐ傍に、この幻想的な庭を護るようにそびえ立つ、石の守護者ガーゴイル。
試しに、と一つ手近にあった石をそれに向けて放るとガーゴイルの重い瞼が開かれ、敵意に満ちた金色の瞳がこちらを見据える。
それを見て古代の民が此処にある何かを護っている事が確信できた彼らは、持っていた武器を構えたのであった。





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