44 プレゼント

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「顔色悪いぞ、大丈夫か?」
「ファンデーションを夏用にかえたら色あわなくなってたんです。」
「紛らわしいな。」

体調不良は早めに言えよ。とだけ、会議に行った上司を見送り
印刷屋へ行く時間だと席を立つ

「行くよ。」
「もう僕一人で行けますが。」
「じゃあ、量があるから台車忘れずにね。」
「わかってますよ。」

まったく。とでも言いたげに席を離れた新人に、先輩が笑いを漏らす
何笑ってるんですかと席に座り直し問えば
いや、あれはデレるのか?と飴をくれた

「デレなくていいです。いただきます。」
「今流行のツンデレだろ?」
「流行・・・迷惑だ。」

そう言うなって。とまた笑われ、はぁ。とため息を漏らす

「・・・あ、明日から休みじゃないですか。」
「なんだ、お前休むのかよ・・・」

裏切り者!と泣き真似をする先輩に、休みが本来ですから。と飴のお礼にチロルなチョコをあげる

「どっか行くのか?」
「京都に二泊三日。回ってきたシートには書いたので上司と課長は知ってますよ。」
「お土産よろしく。」
「はい。あ、今日買い物あるんで定時にあがります。仕事は終わってるんで。」
「珍しいな・・・明日は雪か?」
「初夏に雪とか。」

長期休暇前に、緊急連絡先と予定をざっくり書くシートが送られてきて、それに予定を書く
本当にざっくりだが、一応書いていた




「明日朝移動だよな!」

楽しみだな。と笑う小平太に、長次が頷く

「かばんに積めるのはこれで全部か?」

自分たちが荷物として入っていたかばんは大きく
今回そのうちの一つに六人分の服をつめることに

「パンツ二つとてぃーしゃつ二枚、ズボンが一つ!」
「ぱじゃまはいらないんだよな?」
「はみがきもだって。」
「あと暇潰しがいるとか言ってたな・・・」
「楽しみ、だな。」
「旅行なんて初めてだよ・・・こっちにきて、できるなんて思ってなかった。」

嬉しいなぁと笑う伊作に、同じ様に笑った留三郎がだな!と伊作を叩いた



「ただいま。」
「お帰りなさい!」
「はいただいま。」

出迎えてくれた子供らに1つずつラッピングされた袋を渡して
いつも通り手洗いうがい。そして夕飯の準備へ

「これ、なんだ?」
「プレ・・・贈り物。完全に私の趣味だし高くはないけど、明日用に。」

ガサガサとあけはじめた小平太くんが、不思議そうに中身をみる

「ショルダーバッグ。リュックのほうがいいんだろうけど、リュックって、私好きじゃないの。」
「この小さいのはなんだ?」
「それは財布。ついてるチェーンでバッグにつけとけば落とさないかなって。」

他の5人もガサガサと中身を取り出し、伊作くんが気づいた

「これ、綺麗ですね。」

ピンバッチだ。バッグにつける
ニコちゃんマークで、色だけ違うそれをバッグにつければ、私が誰のかわかるからという理由だけど

「ありがとうございます。」
「どういたしまして。あ、お小遣いもあげるから。」

夕飯後にね。と笑えば、楽しみだとはしゃいだ子供らが年相応にみえた

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