03 再会 Side.竹 *

***は俺と残ったんだ
い組の兵助と勘ちゃんが最初残ると言い張ってたけど

「俺のが力あるし、皆より軽症だからさ。」

***は確かに力が強い。七松先輩並みに強い
けどよ、***だって既に満身創痍で
だから、俺も残ると・・・

「1人より2人だ。な!」
「いーけど・・・死なないでくれよ?八。」

その言葉は最期まで変わらなかった


「い゛、ぁ゛あ゛ァあ゛ァあアア!!!」

勘ちゃんがやられたように拷問を受けて
兵助がやられたように犯されて
雷蔵と三郎がやられたように顔を削がれて
俺がやられたように体に風穴あけられて

それでも、血の泡か淀んだ血しかでない口が動くんだ


みんな、しなないで、おねがい、おれ、がんばるから


雷蔵と三郎はもう見えてない
それでも、わかってるかのように三郎は***を呼ぶ


あ、ぁあ、


戦慄いた口が絶望に歪んで


なんで、みんな、いやだいやだいやだいやだ


その時は何が何だからわかんなかった
死ぬときになってようやく、あの時の***は感覚がなくなって俺達が認識できなくなって
それで、俺達が死んだと思ったんだ

上げていた顔が、好きにされていた体が、リーダー格の男の喉元に喰らいついて
べちゃりと床に落ちた***の、どこにそんな力が残ってたっていうんだ



気付いたら、俺達は先輩方に助けられ学園に戻っていた

***の体は、食満留三郎先輩が裏山に埋めてくれたって
敵は、一等懐いていた後輩の死にキレた七松小平太先輩と、鍛錬仲間だった潮江文次郎先輩が殺してくれたって
報告は中在家長次先輩と立花仙蔵先輩がしてくれたって
手当ては善法寺伊作先輩がしてくれたって



兵助は散々鳴かされたせいで声が潰れ、俺達以外と関わるのを拒絶するようになった
勘ちゃんは足りない指で、機能しない喉で***を呼びながら人を殺してまわった
雷蔵は三郎に作ってもらった面で顔を造り
三郎は狐の面で素顔を隠し、雷蔵の顔を借りたばっかりにと変装を辞めた

俺は、もう忍者になれない体になっていた



輪廻転生



幾度か5人は同じ時代の同じ場所に生を受け集まった
そこに***はいない。いつも、会えない。

「でもさ、最期があんな辛かったんだから・・・もう、いいんじゃないかな?***は、きっと綺麗な所で笑ってられてるのかもしれない。」

これはいつの雷蔵の言葉だったか


そうしてまた集まった5人は、平和すぎる平成という時代で
大川学園で小等部の入学式で出会った
でもやっぱり・・・そこに***はいなくて

落胆と安堵が同時にきて


それが、高等部への進学試験の結果で一人部屋になり
外部入試で入ってくる奴と同室になるのかと少し不安だった

「八、これ・・・***の名前だ、」
「は?え、」

勘ちゃんが名札をなぞって



「えーっと、竹谷・・・八、なんだっけ、まぁいいや。竹谷ってこの中にいる?」

記憶を無くした***が、俺達の目の前に現れた

人を避けて近づくのを拒絶してる***は、逃げるように着替えをはじめて
雷蔵が確認した背中には、あの時の傷が痣として浮かび上がっていた


三郎が、矢羽音で***を呼んだ


反応した***が、顔をしかめて三郎を見る

「俺が、お前ら置いて逃げるわけ、な・・・い、」

震えた声が、***の口から出たと思ったら
***は今度はボストンから薬を取り出して、それを三郎が奪い取れば
死人みたく真っ青になって、崩れおちた

「皆を殺したのはっ、俺だ!!俺が弱いから、バカだから、皆、皆、皆っ皆皆皆皆皆!!!大好きなんだ!死なないでくれよぉっ!!!」

見ていられなかった

俺達は幾度も転生を重ね
苦しく悲しい記憶が薄れつつあるってのに、***はまだ苦しめられてる

「は、ち・・・?」

縋るような声で、抱きしめた俺にしがみつき
不安そうに泣いた

「生きて、る・・・のか?八、」

ガクンと気絶した***を担いで階段を上がり、ロフトベッドに寝かせる
苦しそうに肩で息をしてる姿に胸が締め付けられて


「***は、最期の記憶だけ覚えているのだな・・・」


兵助の呟きに、皆の顔が歪んだ