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不安なら刃物をつきつけてもいいと言った老人に首を横に振る
驚いた老人に、人を殺すのが目的じゃないと返せば
そうか。と不思議な表情で頷かれた

連れて行かれたのは、ちゃんとした部屋

「座るのは嫌か?」
「・・・座、る?」

そういえば、しゃがんだことはあったが座ったことは数えるほど、ないかもしれない

(こう、かな?)

どんな風に座っていたかよく覚えていないから、しゃがんだ流れで片膝をたてて座る
右手で銃を握りながら見据えるも、多くの気配にソワソワし始めた

「行く宛がないじゃろ?」

僅かに首を縦に動かせば、肯定が伝わった

「お主が別の世界から来たのかは確かめようがない。じゃが、お主が無害なのはわかる。」
「・・・無害?」
「語弊はあるかもしれんがの。」

無害、ではない
私は人を殺す以外に脳のない人だ

「わしは、お主に人とは何かを学んでほしい。」
「・・・学ぶ、」

人が何かは自分なりに知っているつもりだ

一言で言えば、金になる

「どうじゃ、帰れるまでここに住まんか?」
「帰る、」
「人の温かさを」
「知れば、帰った瞬間私は死にます。私は死にたくない。だから、生きたい。」
「死なないために生きるのではなく、楽しいから生きる。そのほうが人らしい。」
「それが人らしさなら、私は人じゃダメ。」

けど、ここにいたら人になってしまう
私は人になったら死ぬ

(なんで、こんな世界に、)
「帰れる保障もないんじゃ、この世界を楽しみなさい。」
「・・・私、は、」

喋りすぎたのか、喉が張り付いた
咳払いをすれば少しよくなったけど、もう喋りたくない

「そうしなさい。土井先生、彼女をとりあえず空いている忍たま長屋へ。」
「はい。」
(老人って、強引。)

喋るのは嫌だと黙って従えば、部屋をあとにした



「彼女を忍術学園に住まわせるつもりですか!」

部屋では、黒服の男たちが老人に詰め寄っていた

「正気ですか!?彼女は危険です!」
「あの子は手負いの獣とかわらん。優しさを、楽しさを、喜びを・・・人との繋がりをしらん。教えてあげたいんじゃ。」
「しかしですね!」
「全生徒に伝えなさい。決して殺意や殺気をもって彼女に接してはいかんと。」
「きかない者もいますよ。」
「上の言うことをきかんのは、忍びとしていいことではない。身をもって知るだけじゃ。」

反論はきかん。と一喝すれば、黒服の男たちは渋々ながらも頷いた




「どうかしました?」

部屋へ行くがてら、厠や食堂を案内した土井をじっと見つめれば、首を傾げられた

「気配が、沢山・・・」

そこと、そこと、と天井や床を指させば、なんだか微妙な表情を向けられる
ちょっと待って下さいね。と言った言葉と同時に聞こえた高音に、私は耳をふさいでしまう

「ど、い・・・ですよね。」
「私ですか?はい。土井半助といいます。」
「今の音なんですか?それに、けほっ、」

水を飲み向き直り、気配も消えた。と言えば
少し驚いたような土井に気にしないで下さい。と言われる

「食事の時間になったら呼びにきます。」
「・・・はい。」

といっても何をすればいいのか、どうすればいいのかもわからず
ただ一カ所に留まるのは不安しかないため、部屋からでた

(帰りたい。早く。早く。)