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ぶるっと身を震わせた***は、甚兵衛にお願いして取り寄せてもらった宝石を前に苦笑を漏らす
曰く付きの宝石をとお願いした結果の、当たりをひけたわけだ

「・・・悪意ありすぎ。」

指輪や簪を仕分けしていく中、甚兵衛の臣下が身につけていたという勾玉に呆れ声と共に触れる
恨みの籠もった勾玉は臣下が買ったものではなく部下からの贈り物だというから、相当恨まれてるのかと溜め息が零れた

臣下は今原因不明の病で衰弱しているらしく、***を祈祷師かなにかと勘違いしているのか、甚兵衛は臣下の所持品を最初にみろと持ってきていたのだ

「素人の組んだ命令式って複雑じゃないけどごちゃごちゃなんだよね。」
「おいっ!」
「監視役ならついてきて。」

素早く立って走り出せば、監視役が慌てて追ってくる。別に撒く気はないので勝手にすればいいけど、果たして追ってこれるのか

「待てっ・・・!」
「あなたも浮かびなよ。」
「おわっ!?」

飛べば焦る監視役は、自分がふわりと浮いて私の隣まで飛んだことに驚き固まる。それを無視して痕跡を辿れば、療養している臣下の屋敷へと降り立った
そのまま真っ直ぐ迷わず屋敷を進み臣下の伏せる部屋へと入り、息も絶え絶えな臣下にため息混じりに呆れ声をだす

「恨み辛みは恐ろしい。ね、監視役さん。」
「・・・諸泉だ。」
「ふぅん。さ、やりますか。」

杖先を臣下に向け目をつむりルフの声を聞く。ここはルフがあまり感じられないななんて思いながら、淡く光る杖を見つめる諸泉にこの人好き?と聞いてみた
は?と首を傾げ別にどちらでもないという諸泉は、眩く光る杖先に飛び上がって離れる
警戒しすぎと呆れながら、臣下の胸からピィピィと羽を広げて現れた黒いルフになぜと声を漏らしてしまった

「な、なにをしたっ!!」
「すこし黙って・・・」

白いルフに無理矢理黒いルフを注入する。転じさせるのではなく、注入。そんなことをすれば二つのルフが混在した身体はあっという間に朽ちてしまう
恨み辛みで行動して欲に負けるゴイに生きる価値などあるのだろうか?いつまで経とうと、きっと答えは出せない。出しては、いけない

「・・・き、貴様何を」
「もう大丈夫。しっかりご飯を食べればすぐに体力が戻るよ。」
「え、あ、あぁ、すまない・・・?」
「いいえ。」

帰ろうと尊奈門の肩を叩いてふわりと浮いた

「一緒に帰る?私だけ浮いて帰る?」
「遅れはとらない。」

どうやってだろうかと首を傾げながら飛んだ***は何者だと騒ぎ出した使用人を眠らせ、慌てる尊奈門に大丈夫だからと微笑む

「寝ているだけだから。」
「お前、何者だ。」

ただの上級魔導師よと、***はふわりと浮かんだ。当たり前のように当たり前を壊す***へ、尊奈門の眉間に皺が寄った