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「うわぁすっげー!!」
「わー!?ちょっと止めて!」
「熱い!」
「炊飯器に触らないでっていわなかった!?」
「***さんこのしゃわあ止まらないんだけど?」
「君たち何もしなくていいじっとしてて!!!」

シャワーのコックを閉めながらびしょびしょの床に向かって叫んだ私は、水を浴びた身体を震えさせながらズボンを濡らすきり丸くんにタオルを渡した
バスマットに水を吸わせつつ赤くなる手をつかみじっとしている小平太くんの手を引いて、水をだして冷やさせる

「無知って超こわい・・・なんなの、なんなの一体どうして?土井さん!子ども二人の面倒くらいみててください!」
「す、すみません、」

平謝りの土井さんは小平太くんときり丸くんを引っ張り、ポカポカと一撃づつ殴った。私は即行で着替えてお風呂を洗うと、バスマットを洗濯機に投げ込みタオルと一緒に洗う

「・・・***さん、怒ってらっしゃいますか?」
「がっくりはきています。本当に、なにも知らないから。」
「・・・・・・私は、私一人なら、この何も知らない世界で生きていけます。ただきり丸はもちろん兵助や小平太はあれでまだ子どもです・・・どうか、せめてあの三人だけでも受け入れてください。」

よろしくお願いしますと頭を下げる土井さんは、私が早くも後悔しはじめていることをわかっているみたいにいう。心の中を知られてるみたいで気分が悪いったらない

「しょうがないですからね、何の因果か知りませんが・・・あなたたちは私の部屋へ舞い込んだ。家族を亡くしたばかりの私の部屋へ。」
「えっ、」
「弟は、きり丸くんとよく似てます。だから、多分引き受けました。本当、なんの因果でしょうね・・・わざわざ月命日に現れなくてもいいじゃない。」

神様はとことん私が嫌いみたい。洗濯機に手を添えながらしんみりした私を言い淀みながらみる土井さんは、辛いですかとぽつりと問う。私は首をふり、大人ですからと的外れな回答を同じ様にぽつりと返した

「だから、多分きり丸くんを贔屓しますよ。」
「はい?」
「家族、大好きなので私。」

大好きだった、なんて言えない。大好きだもん。だからきっときり丸くんに折れたし、四人もの居候を認めたと思う

私はにっこりと笑って、驚きました?と首を傾げて見せた

「嘘ですよ。」
「嘘ですか、」
「当たり前じゃないですか、本当のことならまだ会って二十四時間経ってない赤の他人に話すわけないもの。」
「それはそうですが・・・」
「遠慮の気持ちは増したでしょう?」
「もしよろしければ、今度はもう少し軽めの嘘でお願いしてもいいですか?」
「こんな流れで申し訳ないんですが、久々知くん退院できなさそうです。」
「そんなに悪いんですか!?」
「嘘です。」
「***さん!」

のってくれる土井さんに感謝しつつ私は布団乾燥機を眺めるきり丸くんと小平太くんに声をかけ、今日はもう雑なご飯しかないからねと盛大に鳴る腹の虫にため息を吐き出す

テーブルにだしたおにぎりと味噌汁、たくわんたちは綺麗になくなり、食費の予想にゾッとした