3 
「敵地へ置いておけるほど、私はあの子が可愛くないわけありませんわ。私はこの忍術学園がチャミダレアミタケ城と友好的であり安全だからあの子をお願いしましたの・・・それが覆された今、あの子を連れ戻すことは必然かと。」
「まだ、決まった訳ではない。そう急くことも」
「では土井半助先生を今、この場で、会わせていただきましょう。」

舐めてもらってはと、くノ一は続けて笑う。わかっているのだと、美しさを浮かべながら

「・・・本人の意思でと、いうことかの。」
「私の意思です。逆らいませんわ。」

ただ感謝は確かにと、くノ一は深く頭を下げた。まるで今生の別れかのように、丁寧に、***を預かり見守ってくれたことへの礼を述べて
思わず腰を浮かせた学園長はくノ一の目に固まり、羽織が翻された瞬間替わった忍装束に強く声を発する

「***先生が望むのなら、儂はいつでも***先生を受け入れるつもりじゃ。」

微かに振り向き浮かべられた笑みはまるで作り物で、消えたくノ一に学園長はすぐに山田を呼び出し土井の救出作戦を急いた。らしからぬことに訝しげに眉を寄せる山田に、学園長は***の名を出し萎む

「***先生が、昨日付けで忍術学園教員を辞された。今はチャミダレアミタケ城へ戻っておる。」
「それが、なんの関係が?***先生には半助、土井先生の件は伝えぬように箝口令を敷いたのは学園長でしょう。」
「療育者であるくノ一は、知っておった。***先生がどこから知ったからわからんが、これ幸いと引き離すだけならまだ良し。」

良くわからないように首を傾げる山田はくノ一と面識があるとはいえない、どのような人物か知らないのだ。学園長は深く息を吐き出し、このままでは取り返しのつかぬことにと頭を抱えた

「近い内に、***先生とそのくノ一は土井先生と接触するじゃろう。そうと知るか知らぬかは置いておき、土井先生は今普通の状態ではない・・・斬り合いになれば、***先生は勝てぬ。***先生が斬られるか、くノ一が斬られるか・・・土井先生がくノ一に深手を負わされるか。」
「・・・半助に、***先生を殺させる気とでも?いやまさか、」
「あの目は目的のために手段を選ばぬ目。どれをとっても、***先生の心に傷を負わせればくノ一の勝ちじゃ。人への恐怖が薄らいだところへ絶望に似た感情が足されれば、憎悪しか感じぬ夜叉となろう。」

考えすぎではという山田に***の性格は良く知っているはずだと、戸の外にいたシナへ声をかける。シナは戸をあけ、目尻を少しだけ悲しげに下げた

「***先生は、自己嫌悪と卑屈が根底に居座る子です。私のせいで、私なんかが、そう一度思えば変えることなど叶わず、後押しが一言あれば揺らぐこともないでしょう。」

私の責任ですと謝罪の意味で頭を下げたシナは、そのまま私があの子を変えられなかったからと目を瞑る
それを否定し、学園長は儂が甘かったのだと呟いた

「***先生より早く、誰よりも早く、土井先生へ接触するのじゃ。」

学園長命令に、山田は一礼し月の満ち欠けを計算した