2 
「土井先生の代役をされているんですね。ついでに山田先生のもされていたとか。」
「よく知ってるね。誰から聞いたの?」
「そこの人から。」
「あー・・・尊奈門、言っちゃ駄目っていわなかった?」
「・・・え!?じゃあそいつが***先生!?」

コラ。頭を叩かれた諸泉はむすっとしたが、***は苦笑に留まる。視線は昆奈門の口あてを見ており、昆奈門はそれに目を細め何の用かと尋ねた

「知っている情報を出来る限り教えていただきたい。」
「・・・土井先生の?どうしてまた。」
「彼を待つ人がいる。彼が与える場所を自分の居場所だと思う人がいる。だから、」
「建て前が聞きだいわけじゃない。」

一歩近づけば一歩下がる***にこっちにも色々あるのだとため息をつく

「学園長先生に口止めもされてるからね。」
「借りを返してください。」
「今それを使うの?私に借りなんだよ、もっと有効に使わないと。」
「・・・彼は私の恩人です。雁字搦めの鎖を断ち切ってくれた、正義の味方なんです・・・彼の一大事なら、じっとなんてしてられない。」

及第点。耳元で囁かれる甘ったるい声に浮かぶ涙を、拭うための手は震えて動いてくれない。やめてとか細く訴えた***は、顔を上げさせられひゅっと息を詰めて青ざめる

「貸し借りの清算はまた後日で、今はただお願いしてみなよ。」
「っ、」
「カワイソウにこんなに震えて、知らなくて構わないでしょ?誰だって自分が大事だ。」
「私はっ、か、れに、」

彼を、言い淀む姿にニヤと笑った雑渡は、***から離れろと言うようにうたれた手裏剣に跳び諸泉は雑渡の前に飛び出した
息もできないような***を抱き締めそこに立つくノ一は、それ以上考えてはダメよと言い聞かせるように***の背をたたく

「帰ってきなさい。もういいわ、十分よ。」
「そうして考えるのを止めさせるから、その子のそれは治らないのだろ。忍術学園にいて自分から話しかけられるまでになったのも、君がいないからだと思えるが。」
「貴方には生涯関係のない話ね。さぁ***、学園長へ挨拶をしに行きましょう。」

ゆるく頷いた***は小刻みに震える手を包み込まれより下を向いてしまった。そして聞こえた矢羽音に目を伏せ頭を下げると、ぱっとその場から消える
諸泉は驚き、雑渡はため息と共に嗤った。くノ一に睨まれようが変わらずに

「チャミダレアミタケ城は大変みたいだが、よほど彼女が大事か。」
「私が見つけ拾い、育て教え込んだ。ここのおかげで、人と話せるまで成長したのは感謝しているけれど、それ以上は不要よ。」
「・・・何を望む。」
「停滞と、増幅。仕上げは死よ。」
「悪趣味極まれば、いっそ清々しいほどだ。」

邪魔立て無用と笑ったくノ一は学園長の庵へ向かい、殺気しか感じ取れなかった諸泉はぶるりと震え腕をさすった

「尊奈門。」
「はい。」
「・・・いや、いいか。成るようにしか、成らないのが世の常だからね。」