***はなにも異性が憎い訳ではない。だから、顔と名前と声を知っている忍たまがふらふらとさ迷っていれば、素通りはできないのだ。先生をやって時間が経ちすぎたせいと言えなくはない
「・・・きり丸くん、どうかしたの?」
「っ、え、えっ!?確か・・・***、さ、」
「ここは職員室だよ。・・・こんな時間に生徒が立ち入るべきではない区画なのは、わかってる?」
戸の前を行ったり来たりするきり丸へ声をかけた***は、なんでここにと動揺する姿にため息をついた
「私は忍術学園の先生だから、職員室にも用があるよ。」
「同業者って、つまり、え?でも女の先生は山本シナ先生だけじゃ、」
「くノたま教室もね、座学と実技で先生は分かれているの。」
それで、どうかしたの?問う***に、言い淀みながらも土井先生がいるかもと、きり丸は窄む声で告げる
土井先生の部屋はここじゃなくてと説明しようとする***が知らないことに気づいたきり丸が、なんで知らないのかと***の着物をつかんだ
「なに?」
「土井先生、今、出張中なんすよ・・・?」
「出張中?土井先生が・・・?あ、本当だ。行き先は、坂東・・・また遠いところに。」
ていうかならいなくて当たり前だと不思議がる***に、きり丸は眉を下げボソボソと何かを呟く
聞き直した***は、何を根拠にと息を吐いた
「根拠は・・・ないです。でも、不安で・・・出張なんて急だし、な、なんかあったんじゃって・・・」
「憶測で泣かないの。ほら部屋へ戻りなさい。」
まったくときり丸を方向転換させ背を押した***は小さく頼りない姿が見えなくなってから出張かと、一度だけ呟く
翌朝いつもの時間からずれて食堂にはいった***は以前の不審者に出くわし立ち止まった。不審者もまた、あ、と口にして立ち止まる。食堂には二人と食堂のおばちゃんだけだった
「・・・なんだ。」
「解毒はうまくいきましたか?」
「あ?ああ、まぁ、」
「良かった。で、あなたはなぜここに?」
「組頭が一年は組の臨時教員をされているからだ。」
はてなと首を傾げた***は、土井先生と山田先生はクビにでもなったのだろうかと考えたが、理由は?と取り合えずば聞いてみることに。もちろん、視線は上がって喉仏、不審者改め諸泉には正面から***の顔を正確にみることはできない
「土井半助と決闘をし、私が勝ちを得た。土井半助が現在行方不明のため、捜索にタソガレドキ忍者隊と山田伝蔵が向かっている・・・だから、組頭が臨時教員なんぞをしているんだ。」
「勝ちの最大の証拠を無くすなんて・・・少し抜けているのね。まぁ・・・そう、なら納得。一年は組は大変でしょうけど、頑張ってね。」
あっさりと発言を信じた***に信じるのかと思わず口にした諸泉は、別にとカウンターへ向かう***についていく
「あなたの実力なんて知らないもの。」
私に近づかないでと寒そうに腕をさする***に謝った諸泉が竹筒を手に食堂を出るのを見送り、***はぐっと拳を作った
「そうだ。」
「・・・?」
「これ、***って先生には言わないでくれ。そう組頭から言われてる。」
「・・・そう、わかったわ。」
この人はやっぱり少し抜けている人だ。確信した***はお弁当を依頼すると、誰に聞こうかなと思案した