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「あの人、本当は先生のなんなんっすか?」
「・・・同業者、かな。」
「あの人、くノ一なんだ・・・」

へーと呟いたきり丸はきれいに掃除された家の中で転がった。にへ、とだらしなく口元が緩み、不思議そうに見てくる土井に笑った顔を向ける

「オレの家だ。」
「まあ・・・そうだな。私たちの家だ。」
「卒業まで、よろしくお願いします。」

ぱっと身体をおこし丁寧に頭を下げたきり丸は、早速バイトだと元気よく家を飛び出していった
元気な子だと苦笑した土井は一度も笑んでくれなかったなと、私はこれでと戻ってしまった***を思い浮かべる。作った表情ばかり向けられたせいで、心が素直な***を渇望しているのだ

「・・・はぁ。」

夕飯の買い出しでも行くかと腰を上げた土井に、満たす機会はなんと夏休みまで一切与えられなかった


「山田先生!乱きりしんが!」
「またか!」

***が避けるとも土井が避けるともなく、覚えが悪いだけならいざ知らず無駄な行動力が好奇心と相まって問題が絶えないのだ
テストで無いに等しい点を連発し補習に追われるはずの日々は、ありとあらゆる人を引き寄せる一年は組の生徒たちがかき集めるドクタケ忍者隊とのイザコザやドクササコ忍者とのイザコザ、更に学園長の突然の思いつきで遅れに遅れ休日返上は当たり前。何年も単身赴任中の山田の元には息子である利吉の帰れコールが頻発している

「やあ利吉くん。また山田先生かい?」
「はい。いい加減帰って下さらないと母上が般若にでもなってしまいます。」

乾いた笑みを互いに浮かべたものの、利吉はすぐにため息をつきそちらはどうですかと苦笑した
は組に振り回されてばかりだよ。そう答えた土井にそっちじゃなくてと、利吉の首が傾げられた

「***さんという方といい雰囲気だと、父上が仰ってましたよ。」
「そ、んなことはないよ。」

あからさまな動揺にそろそろいい歳だろうにと思うも、必死に言い訳を連ねる土井に少し同情してしまう

「わかりました、もう言いません。」
「・・・助かる。」
「は組にバレでもしたらひっちゃかめっちゃかになりますからね。」
「そうだが違うから。別に***先生とは・・・」

最近会ってもいないと落ち込み始めた土井に何と声を掛けようか迷ったが、利吉はとてもいい笑顔を作り手伝いますかと土井の顔を上げさせた

「・・・遠慮しておくよ。」

君に取られそうだ。とは言わないが顔にでているのだろう、利吉は私は父上を探しに行きますと頭を下げ踵を返す
ほっと息を吐いた土井はその日、久しぶりに遠巻きながら***の姿を見た