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「ねぇ***くん!雷蔵くんと双子ってほんとー?」
「ぜんっぜん似てなくない?仲悪いって、連れ子婚とかぁ?双子じゃなくて、義兄弟っていう。」

ああ、顔が怖い。瞬時に不機嫌を察知した斉藤は、ごめんねと苦笑する***にへ!?と***を振り返った

「らいぞうって、不破雷蔵?格闘ファイターにいそうなかっこいい名前だよね。」
「あのねあのね、本人はすっごいほんわか癒し系なんだよ!」
「大学で一度だけ話したことあるんだ。名前が印象的すぎて顔はイマイチ憶えてないけど。」
「もしかしてデマ?」
「似てない、と思うんだけど?記憶違いかな。」

似てない似てないと笑いながら話す二人にだよねと肩を竦める***は、変なこときーてごめんーと去っていくのを見送り、笑顔が固まっている斉藤に言いたいことあるならどうぞと腕を組む
それにうん、サラッと嘘を混ぜるよねとため息を吐き出す斉藤は、どこからの情報だろうねと苦笑しながら舌打ちを漏らした***の背をたたいた

「授業終わったよね。」
「今終わったばかりですね。」
「課題は後回しにして飲みにいこっか。」

未成年を誘わないでよ。そうため息をつく***にじゃあ食べに行こうよと笑う斉藤は、お父さん友達のとこ出て時間あるんだと***を覗く
なら自主練も無理かと思い出したように呟き、チッと舌打ちを漏らした

「今日が定休日じゃなければ・・・今ならくる者皆モヒカンにできるのに。」
「やめてあげて。」

逆モヒカンでも可。と首を鳴らして食事行きますかとスマホを取り出して、***は中華食べたいと邪魔そうに前髪をよける
切ろうか?とすかさず指でポーズをした斉藤は、そろそろ髪染め直す時期だしと自分の髪をついっとつまんだ

「アッシュ系ならベージュは?」
「プラチナベージュとか。」
「ならゴールド。」
「じゃあ***はロゼね。」
「カシスレッド。」
「ならプラチナベージュのメッシュ。」
「そっちはカシスレッドのメッシュで。」

決まりと笑う斉藤に***が笑い返す直前に、タカ丸さん!と斉藤を呼ぶ声
振り向いた二人に不破もちょっとと駆け寄るのは、比較的仲のいいグループ。そして呼び止めておいての第一声は飲み会いかね?なのだから、だいぶ気さくな感じだ

「行かない。」
「彼女の友達がさー俺がタカ丸さんたちと話したことあるっつったら連れてこいってうるさくて。」

興味ない。断言する***に斉藤も僕もそういうのはちょっとと苦笑する
そういうことでと***は帰ろうとするが、肩をつかまれため息をついた

「可愛い子いるぜ!?」
「困ってない。」
「逆に減らしてほしいかな。」
「これだからチャラ男は!」

俺の顔たててよと騒ぐ級友に斉藤は***の腕を引き、困ったように眉を下げる。女子からのお願いならモテることを自覚している分もう少し強く出れるが、男子からは難しい
***は仕方ないかとまたため息をつき、少しだけなとオーケーを出す
ありがとうと両手を上げた級友に、***は上を向き斉藤は下を向いて沈黙した