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夢をみる。必ず、最後があの女に殺されて終わる夢
ここにはじめてきた日から毎日かかさず、あの女が僕に笑いかけるんだ。刷り込みのように、死の恐怖と痛みが生々しく残り続ける

「おはよう***、大丈夫か?まだ顔色悪いぞ?」
「お、はよう、八左ヱ門・・・?」
「なんで首傾げんだよ、おはようであってるよ。」

そっちじゃない、疑問は名前。でもわざわざいう必要はない
僕は友達らしい人との関わりを作ることにしたんだから

「八左って呼んでもいい?」
「えっ?」
「八左ヱ門長くて舌噛んだ。」
「おま、なんでそうちょいちょいドジなんだ。いいよなんでも。」
「八左やっさしー。」

だろ?と笑う八左がお、兵助こっちこっちとあの女を呼ぶ
兵助という名前を聞いた瞬間に起こる反応は二つ。一つはあの女と重ねての恐怖、二つめは胸の高鳴り
ドキドキとか動悸じゃなくて、高鳴り。どんだけ身体の主が仲良かったのか、それでも罪悪感より恐怖が勝って早いうちから恐怖が大半を占めるようになってる
本当に、だめなんだ。これがトラウマってやつか

「じゃ、じゃあ八左、僕行くから。」
「は?なんでだよ、兵助いるぞ?」
「八左ヱ門、***、おはようなのだ。」
「おう。兵助はこれから飯か?丁度行くと」
「伊作先輩!大丈夫ですか!?」

逃げなきゃ、逃げなきゃ死ぬ。動悸息切れで救心が必要な僕は、向こうで留三郎を巻き込んで転んだ伊作に駆け寄る
僕を呼ぶ声は全部無視で、尻餅をついてる伊作を引き起こした

「大丈夫ですか、伊作先輩。」
「う、うん・・・留三郎、大丈夫?」
「にみえるか。」

おでこの赤い留三郎に見えないと揃って首をふれば、留三郎はお前ら仲いいなとため息をついて僕の向こうをみていいのか?と聞く
なにが?と首を傾げる僕は、久々知がみてるぞといわれ鳥肌が立った

「お、おい、大丈夫か?」
「一気に青を越えて白くなったね。留三郎、今の***に久々知の話は厳禁だよ。」
「なんでだ?***と久々知って恋」
「留三郎!」

な、なんだよ、と引いて伊作をみる留三郎に、伊作は僕たちとご飯食べようと笑顔をくれる
それに頷いた僕と伊作を、留三郎は驚きながら何度も見比べていた

伊作は、僕が触れてほしくないことを避けて心配をしてくれる。僕が女なら惚れてただろうなというシチュエーションとかあるけど、男同士だからないない

「今日何か実技ある?」
「多分・・・?」
「案外身体は覚えてるものだから、意識しすぎない方がいいかもよ。」
「そんなもん?じゃね、そんなもんですか?」

いいよ僕にはタメ口でとくすくす笑う伊作が優しい。昔って本当年上年下っていう年功序列?うるさいから、僕にしてみれば皆年下なのに身体の主が幼いせいで敬語つかわなきゃいけない
それがないのは、本当楽。留三郎が穴あきそうなほど僕をみるのは無視

「辛くなったら、いつでもいいなよ。」
「僕伊作と同じクラスがよかった。」
「くら、す?なに?」
「同じ組がよかった。」

それは無理だよと呆れたように笑った伊作は、何定食にする?と一度僕を通り越してから僕をみる
僕は振り返って八左をみてから伊作に戻るとどうかした?と聞くけど、伊作はううん。気をつけてね。とよくわからない返しをもらった