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「悪かったって。んな泣くなよ。」
「むりっ!ムリムリムリムリちっかーいっ!!」

ダッシュで逃げたらそっこーで捕まりましたツラい。どうしてこうなったツラい
ぺろっと涙舐められた気持ち悪い死ねる。シネ

「純血って喰ったことないからな、ちょっと味見たくなったんだ。本当悪かったよ。」
「なら離してー!」

後ろから抱きしめられて耳元で囁かれて、涙なめられるわ首を舌は這うわ、悪夢か逃げたい

「ヒッ!は、離してってばぁっ!!」
「イヤだ。」

ビリビリと火花が散るくらい指輪が反応してるのに、この人全然気にしてない。どうしよう、搾り取られる
やばいやばいやばいしゃれにならないどうしよう!

「こんな程度じゃ、今度七松先輩に襲われたら一溜まりもないぞ。」
「何言って、」
「こうやってさ、餌になって終わるぞ?」
「だからな、」

ブツッて嫌な音。じゅるるると吸われて思わず号泣
言葉もでないし声もでないし、私を掴む手は強すぎて逆に笑えるし。目眩がして目の前から走ってくる誰かに手を伸ばす
助けて、お願い、

「お、かあ、さ・・・」
「そういうのすっげーゾクゾクする。」
「たすけ、てっ、」
「ちょっと八左ヱ門なにしてるの!!」
「雷蔵か、おは」
「は・な・れ・な・さ・い!!!」

べふ!?とかよくわからない声と共に密着してたその人が、どっかいった
わけわかんなくてふらふらとしゃがみこめば、走ってきてドロップキック(顔面位置に)をくらわせた人がしゃがんで背中を撫でてくれる

「大丈夫じゃないよね、ごめんねうちのバカが。」
「なんでっ、な、んでっ、」

私がこんな目に!!意味わかんないよ帰りたい一年前に戻りたいそうしたらお母さんに最初勧められた学校行くのに!
痛くないけど痛い!気持ち悪い!

びゃーって泣く私に謝り倒すその人は、僕不破雷蔵っていうんだと噛まれたとこにハンカチをあててくれる

「ふ、わ、らいぞー?」
「うん。高等部三年、不破雷蔵。察しはついてるだろうけど、吸血鬼。祖母が人間だったらしいから、純血じゃないけどね。」
「なんで、助けてくれたの?」
「え?だって、嫌じゃない?僕は餌になるのなんて嫌だから。」

まともな感覚の持ち主がいた!当たり前の意見なはずなのに別の意味で涙がでるほど嬉しい
お友達になってくださいと手をつかめば、痛いから離してほしいなって手をみられる
慌てて手を離せば、苦笑しながらもよろしくねって落ちてたカバンを手渡してくれた

「・・・そういえばさっきの人は?」
「八左ヱ門?それならあっち。」

あっち。と指さされたのは視力1.5はある私がギリギリ見える彼方で、電柱をへし折る形で気絶しているようなさっきの人の姿が
うわぁ、と引きつった私にやりすぎちゃったと照れ笑いをした不破先輩は、まあ八左ヱ門だから大丈夫でしょと学校行こうと錠剤を数粒飲み込んだ

「それなに?」
「うーん・・・携帯食料、みたいな?やっぱり血を流したせいかニオイがすごいから、これないと僕まで君を襲っちゃうよ。」
「へー・・・不破先輩みたいに優しい人ばかりならいいのに。」
「僕は優しくなんてないよ。人でもないし。あと、雷蔵でいいから。」

にこって笑った雷蔵先輩は、つられて笑った私を保健室まで案内してくれて
校医の新野先生に事情を説明して、手当をしてもらって輸血(純血の人間の血だって、なんだそれ)までし終えるまで一緒にいてくれた

結局早退というか休んだけど

ただ、新しいの買って返すっていったのに、ハンカチを大事そうにポッケないないした雷蔵先輩は、新野先生に気持ちはわかりますけどねって言われてた