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「あっ、わり、」
「こっちもよく見てなかった、ごめん。」
「・・・雷蔵の、」

ドン。と肩がぶつかった二人は互いを見つめ、竹谷は目を泳がせ***は首を傾げながら地面に散らばる教科書を拾い上げる
ぱたぱたと汚れを払い互いに気をつけようと重ねた教科書を竹谷に渡した***に人違いかと混乱する竹谷に代わり、隣にいた久々知が雷蔵のお兄さん?と顔を覗かせた

「それ、言われたくないんだ。」
「なんでなのだ?」
「お、おい兵助、」
「似てる顔が兄弟じゃなくて、僕と不破が兄弟だなんて不思議じゃないか?」

まあ確かに似すぎだなと頷いた久々知は***と同じく雷蔵と鉢屋を思い浮かべているのだろうが、竹谷はつい先日の***と今の***のギャップに混乱は継続中

「似てないのね、なんてざら。向こうが兄弟に間違われるのも当たり前。それでも大人からはお兄ちゃんなんだからと言われ続けて、しまいにはなんで顔が似てないのなんて聞かれる。」

そんなこと僕が知るわけないじゃないかとため息をつく***に確かになと頷いて、久々知はすっと右手を差し出した
それを不思議そうにみた***は、握手かとその手を握る

「友達にならないか。」
「いや、間に合ってるから。」
「そうか、ではお知り合いからはじめるのだ。」
「交換日記からお願いします的な?まあ、いいよ。」

よろしく久々知と手を離した***は、いいのかよ!と騒ぐ竹谷を無視してそれじゃとあっさり去っていく
それを見送って兵助!?とカッと目を見開いた竹谷に、久々知は不思議そうに首を傾げた

「八左ヱ門は思い出したのはいつだったのだ?」
「は?・・・あー・・・いつだ?小学、四?五?辺りからうっすらと。」
「俺は中学生のとき、受験する学校探してるときなのだ。」

それがなんの関係があるんだという竹谷に頬をかいた久々知は、皆には言えないけどさと握手をした手をにぎにぎと動かす

「勘ちゃんもだけど、小さいときから覚えていたのなら、周りからはさぞ気の違った子に見られたんじゃないか?」
「は?」
「迷惑をかけられ続けた双子の兄が、元凶と関わり合いになりたくないのは当然なのだ。」
「・・・まあ、そうか。」
「仲直りには協力するさ。でも、追い詰めたらあの人はさっさと逃げてしまうのだ。」

そうなったら雷蔵が壊れてしまう。そう呟いた久々知に、竹谷は俺にはよくわかんねぇなと頭をかきむしった


勘ちゃんと三郎が外堀なら、俺は内から攻めるのだ。そう笑った久々知に、竹谷はこえっと小さく笑った