4 
「お主が神子様か。」
「そうですね。」
「儂はタソガレドキ城城主、黄昏甚兵衛。摩訶不思議な技を使うというお主に折り入って話があっての。」

興味ない。とわざとらしく欠伸をした***の縄がぎゅっと絞られ、キッと雑渡を睨みつけた***は私の杖返してと呟く

「殿の御前で」
「よい。名はなんという。」
「***。」
「***。儂は領地拡大にそちの力を借りたい。」
「私はゴイが統一する国では生きられない。」

お断り。と笑った***は、ゾルフ(風魔法)と呟き縄を切るとふわりと甚兵衛を浮かせる

「殿!」
「私はゴイを憎んではいないけど、仕えることはできない。」

では攻め方を変えようと呟いた甚兵衛は、何か言った?と首を傾げた***に対し空中で器用に頭を下げた
一歩引いた***は、やめてよと首を振る。そしてキッと甚兵衛を睨みつけた

「領地を望みながら国民を見殺しにするゴイの頼みに価値なんて」
「儂らには、あの病を治す力がなかったのじゃ。」
「っ、でも、下級魔導師レベルで事足りる病よ。」
「こちらに、まどうしというのはおらん。」

意味が、と混乱する***に、甚兵衛はぽんと爆弾を落とす

「ここはお主のいた世界とは全く別の世界じゃ。」

***本人が必死に否定してきた考えをあっさり発してしまう甚兵衛に、***はうろうろと視線を彷徨わせ伏いてしまった
それでもすぐに顔をあげ視線を甚兵衛に定めると、浮かせていた甚兵衛をおろして私はあなたに仕えることはできないと頭を下げる

「ごめんなさい。私は、恩人を裏切れない。あの方は私があなたに仕えたとしても私を責めず気づかい慈しんでくれる。だからこそ、私は恩人を裏切れない。」
「儂に力を貸してほしいというのは、領地拡大だけに留まらん。」

眉を下げたまま目をふせる***に、甚兵衛はその妙な顔に笑みを浮かべた

「全員とはいかんじゃろうが・・・病を治し枯れた田畑を甦らせ、民の統治に、協力してもらいたい。」
「・・・私は、あなたが考えるよりずっと何もできない。」
「十分じゃ。」
「じゃあ、お願い、聞いてもらえますか。」

あの里の人達が不自由しないように手配してください。彼らは右も左もわからない私によくしてくれました。
それに甚兵衛が頷けば、***は足を揃えて姿勢を正すとこれからよろしくお願いしますと頼りなげに小さく、けれどはっきり告げた


神子様の噂が誠しやかに広がる中、タソガレドキ城は前代未聞の能力者(兵器)を手に入れたのだ