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「先輩。」
「どうかした?」

伊賀崎は珍しい褐色の肌を持つ優しい先輩を、存外好いていた。もちろん、ジュンコたちの足下にも及びはしないが
自分が話しかけるとまずはジュンコを見て微笑んでからこちらに顔を向ける、稀な先輩だから

「竹谷先輩が嫌いですか?」
「き、らいじゃ、ない。よ。」

だから、伊賀崎にも誰にでも優しい竹谷と***なら、まだ***に声をかけるのだ

「では苦手、ですか?」
「っ・・・」

うようよとさ迷った目が伊賀崎を映し瞼は閉じられる
そして静かに、首はこくりと縦にふられた

「僕ね、間違いだって気づけたんだ。だから、もう傷つきたくない。」
「よくわかりませんが、僕は先輩が好きですよ。そこらへんの人より人らしい。」

ジュンコもそう思うだろ?と愛しの蝮を撫でる伊賀崎に、ジュンコはすりよりちろと***をみる
そしてしゅるりと細い舌をだし、***はそれをみて笑った

「綺麗だね。」
「はい。」
「僕はジュンコさんが大好きだよ。」
「ありがとうございます。」

整った顔に微かな笑みを浮かべ、伊賀崎は頭を下げる。伊賀崎は基本素直な性格だ



誰がどんな風に二人を見ていたかなんて、二人にはわかるはずもない