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「***ちゃんまじ感謝してっから!」
「初任給で焼き肉奢るからさーまた会いに来ていーい?」
「おいビッチふざけんな、***チャンは俺らが給料日付近おさえてんの。」
「はぁー?給料日付近なんて誰がいーましたぁ?頭悪ぅ。」
「ビッチ力で就活したクソビッチがなんかいってっけど。」
「うっせーよヤリチンが!性病拗らせてシネ!」
「おいお前たち***ちゃんが頭抱えてるからやめたげて。」
「ゴッメーン***ちゃん!」
「***ちゃん謝るから見捨てないで!」
「うん、うん。わかったよ。うん。」
「あー面倒になってるー!」

卒業証書を持ちながら絡んで囲まれていく**は、言葉遣いを気をつけろと何度と溜め息を付き初任給は貯金しなさいとバイブでアラームを知らせるスマホをみた

「皆と一緒で僕も今日でこことはさようならなんだ。来月からある学園でここの倍の給与で雇われるから。」
「金かよ!」
「***ちゃん金持ちじゃん!」
「世の中お金です。」

じゃあ僕はお先にと駆け出した**の背中に、卒業生全員が好意をもって各々別れを叫ぶ
それほどまでに馴染むのは彼らが**に道を正されたからに他ならなかった

さて、どこかの出来の良いありきたりでつまらない漫画のような光景を実現させた**は、教員免許をもたない進路相談室にいる座敷童的存在だ

電車を乗り継ぎバスに乗り目的の学園へとついた**は真っ直ぐ事務室へ向かい理事長室へと通される
直ぐに茶が出され理事長と二人きりになった室内は数秒の沈黙がおりた

「・・・就任を了承してくれたこと、まずは礼を言わせていただこう。」
「いえ、私などを必要としてくださり、こちらこそありがとうございます。」
「早速じゃが、明日」
「任期は4月1日より来年3月31日まで。給与は先日提示していただいた月給を時間給に換算させていただきましたので、そちらで。雇用形態は非常勤。基本朝9時より夕方6時まで、昼休憩は生徒の授業中に1時間15分固定。」

すっとテーブルにおかれた書類に驚いた様子の理事長に譲りませんよと微笑んで、サインをとだけ告げて黙る**は、ゆっくりと茶を啜る
静かにサインがされてそれをしまうまで沈黙を保った**は漸くどうもと口を開いた

「では来月よりよろしくお願い致します。あ、教職員ではありませんので生徒の前での挨拶などはいたしません。あくまで進路相談室の住人ですから。」

改めまして*****ですと頭を下げた**に、理事長である大川は何かをいいたげに頷いた