6 
「アナタはワタシのもの」
「ワタシのものにならないなら、コロシテアゲル」
「ねぇ、だから、ワタシをミテヨ」

「やぁっと、ワタシのものになった」

「うわぁあああ!!」
「***!?」
「いやだやめろ僕に触るなやめてくれっ!」

黒髪だ、黒髪が前にいる、あの女が僕を殺しにきてるんだ

「留三郎鎮痛剤を!」
「あ、ああ!」

ぷつっと何かが刺されて、意識が朦朧とする
ふらりと倒れたところを伊作に支えられた

「本当に、人が変わってしまったね。」
「・・・そうだな。」

当たり前だ、僕は僕なんだから。そう思っても口には出せず、ゆらゆらと微睡んで意識を手放す
次に起きたとき、ごりごりと草を擦る伊作が大丈夫かい?と微笑んでくれた
それに大丈夫。と返して、伊作に苦笑されてしまう

「大丈夫なら退院していいよ。」

ありがとう。そういおうとして、ちょっと詰まった

「く、くち、いますよね。」
「くくち?ああ、久々知兵助?うん、いるね。」

あえてうれしい?と微笑まれて、そんなわけあるかと声を大にして叫ぶ
キョトンとする伊作に顔も見たくないと泣きそうになりながら訴えた

「か、顔色悪いね。」
「あいつを見た瞬間っ、僕死んだと思った!あいつがいるなんてきいてないっ!」
「でも、彼の似顔絵を見てもなんとも、」
「似顔絵と実物は違う!写真でも大分違うんだから当たり前じゃないか!僕はあの顔が大嫌いなんだ!」

叫びすぎて吐きそうになって、僕は伊作に背中を撫でられる
僕は伊作につかまりながら短く浅い呼吸をなおそうと努力した

「ダメだ、僕頑張れるかな・・・」
「もし駄目そうならご両親に文をだして休学するといいよ。」

今度こそありがとうとお礼を言って、僕は覚えたこと全部忘れてそうだと頭を抱えながら無事自室へ
先が不安で仕方ない。キチガイと同じ屋根の下なんて、考えただけでも苦しくなる

「***・・・」

誰かに部屋の外から呼ばれて、なに?と戸を開けた。似顔絵はみたし名前もきいたけど、声なんて覚えてないから下手なこと言わずに
戸を開けて、見合って、ひゅっと喉がなる

「***、大丈夫か?」
「っ、」
「***!」

ふらっとよろけて支えられる僕は、眉を下げてこっちを心配そうに気遣うあの女に目眩がした
なんで、こいつがここにいるんだ。なんで、

「顔色が悪いのだ、保健室へ」
「いらない!」

触るなと振り払って戸をぴしゃりとしめて、あいつの声だけはまず覚えて逃げようと部屋の隅で誓った

自分のことで精一杯すぎる僕は、いつか帰れるのだろうか