天に仕える女人、それは所謂女中では? 
「こちらがお部屋です。」
「わざわざありがとうございます。こちらの皆様は心優しき方ばかりで、わたくし嬉しいですわ。」

にこりと笑う今回の天女様は、妖術にかかってないであろう今ですら今まで出会ったどの女人より儚く美しい
気を抜くと、というよりふとした瞬間に見惚れて魅入ってしまう

「天女様は優しい人が好きなのですか?」
「ええ、もちろん。尤も、悪しき人間などこの世に生まれ落ちるはずもないと、そう考えております。」
「悪しき人間、ですか?」
「産まれながらに、第一に、他者を貶めようと画策する人間など居らぬと思います。最初は誰しも生きるためだけに産声をあげ息をするものだと・・・わたくしのこの考えを、否定する方も多くいらっしゃいますが、貴方はいかがでしょうか?」

だが例え美しくあろうと、平和で平穏な未来から来たという俗物に共感などはできはしないが

「私も、そう思います。天女様。」

心底嬉しそうに笑う天女様は、知らない。天女様は上級生の色の教材として扱われる

今回世話役に任命されるのは六年生、一番天女様を落としやすい位置
天女様に敵意や警戒を持つ悪役は五年生、発展により天女様と親しくなりやすい位置
まだ幼さの残る(今回の天女様は六年生より年上のため)無垢を覗かせて懐く役は四年生、天女様に取り入りやすい位置
下級生は事情を知りつつ好きなように動いてもらい、我々教師は部外者の立ち位置だ

「嬉しいですわ。改めて、***と申します。私は天女ではないので、名前で、読んでいただければと。よろしくお願いいたします。」
「私は土井半助です。よろしくお願いします。」


***が一度も自分を天女だと名乗ってはいないだなんて、誰が一番に気づくのか