5 

「助けっ、だれか、・・・、」
「***、」

戸惑いがちに呼ばれても反応できない

うっそりと笑った女と困惑してぎこちなく笑い泣きする体の主の友達が重なって、殺されたくないという言葉がぐるぐる
ふと、自分が室町で忍者やってる設定を思い出し
出来るだけ意識せず、逃げ出した

よく、記憶が無くても培った身体能力は健在だというから

「やっ、た・・・!」

ぐんと離れることに成功して、現在地不明のまま走りつづけてわき腹が痛んだ
げほっと血を吐いて、それでも逃げる

「ふ、ざけんなっ・・・!」

死ぬなら勝手に死ねよ、僕を巻き込むな
まだ彼女の悲鳴とメンヘラ女の笑い声が入り混じって、恐怖が蘇る悪夢をみるんだ
一回死んだんだ、当たり前だろ?
なのに、メンヘラ女と同じ顔の奴が友達?無理だろ果てしなく

「たしか、確か、」

人物画で教わったから、思い出せる
最初に会ったのが勘右衛門、メンヘラ女が兵助だったはずだ

「またっ、また殺され」

いやだ、怖い!僕が記憶喪失なんかじゃなく本当に別人だとわかったら、僕はまた殺されるのか
そんなの絶対に嫌だ!僕は楽しく平凡に生きたい

「あっ・・・!」

注意力が足りてない。足が空を踏み、落ちる
ガサガサずぶりと左手に枝が刺さり、僕の心はもう限界だ

「い、たいっ、いたいっ、助けて!誰か助けてっ!」

こんなの夢だ、夢に決まってる
痛みがあったら夢じゃないなんて、100%そうだなんて誰が実証したんだ
お願いします、早く起きたいんだ

「***、ここにいたのか!」
「っ、え、あ・・・」
「よかった、すぐに手当てしてあげるからね。」

ザザッと伊作と留三郎と確か記憶してる人がおりてきて、僕をひょいと抱き上げて伊作が頭を撫でてくれる
大丈夫、なにも怖くないからと微笑まれて、何かあったら逃げるんじゃなくて言えよなと僕を持ってる留三郎にいわれた

「っ伊作、せんぱっ、あ、あいつが、あいつがいるなんて聞いてない・・・!」

留三郎に抱き上げられながら伊作にすがりつけば、あいつって誰のこと?と心配そうに見つめられ
あの女が、と口に仕掛けて意識を失った